2017 / 08
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私、南愛子(みなみあいこ)中学2年生。
親友の北山広子ちゃん、愛称ヒロちゃんとは小学校から大親友。
生まれてから幼稚園までは、父親の仕事の都合でフランスに住んでいた。
所謂、帰国子女ってこと。
小学校入学を機にこっちへ転勤となって・・・それと同時に父方の祖父母と同居し始めた。
入学当初、集団登校などもあった。
他の友達は同じ幼稚園や保育園を卒園してきているからそれぞれもうお友達がいた。
私には・・・そういう友達がいなくて。
いつもお世話してくれる小学2年生のお兄ちゃんはいたけれど・・・。

そして入学式の次の日からいきなり登校拒否!
「学校に行きたくないないら、ここでおばあちゃんのお手伝いしている?」とか
「学校行かないでおじいちゃんのお店でバイトする?」なんて祖父母は甘かったけれど
特に母親は、首に縄をつけてでも登校させたくて当時は躍起となっていたっけ。

そんなことが5月のGWまで続いて、休み明けに席替えになった。
私も窓際の席の一番前、担任の机の前。
なんか端っこ過ぎてクラスメートから仲間はずれにされた気分になってしまって・・・・。
机を移動させた途端、下を向いてしまった。

「どうしたの?南さん?気持ち悪いの?
先生っ!南さんが―――!!気持ち悪いみたいです!!」
私の後ろの席になったヒロちゃんが私の様子に気が付いて担任に教えてくれた。
補助で入っている先生が付き添って私は保健室へ。
席を立つ時、ヒロちゃんが心配そうな顔で見ていたのを今でも覚えている。

1時限の授業の前に保健室へ連れて来られたのだが、
いつも家にいる母親や祖母と連絡が取れないので
結局、2時限の終わりまでベッドで休んでいた。
「微熱があるから本当はお家に帰った方が良いのだけれど・・・・
お母さんと連絡が取れないから暫くここで休んでいてね」
養護の先生の言葉に入学して初めて自分の存在を知ってもらえたような気がして涙ぐんでしまった。

25分休みに入り、保健室の窓から校庭で遊ぶ児童の声が聞こえてきた。
ベッドの周りは白いカーテンで閉ざされていて・・・楽しそうな声と反対に私の心は沈む一方だった。

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「先生、南さんは?」
保健室に静かに入ってきたヒロちゃん。
「先生、南さん、給食食べないで帰っちゃうんですか?お迎えは?」
「南さんのお母さんと連絡が取れるまでここで休んでいた方が良いと思って」
「お熱があるんですか?」
「そうね・・・少しあるかもね。5月に入って急に暑くなったでしょう。暑さに体がビックリしちゃったのかもね」
「じゃぁ、今は寝ているんですか?」
「どうかな・・・?カーテンをそっと開けてみてごらんなさい」

私は起きていて2人の会話を聞いていたのもバツが悪かったので
寝たふりをしようと布団を被ろうとしたが間に合わず、
カーテンの合わせ目からからひょっこり顔だけ出したヒロちゃんと目が合ってしまった。

「気持ち悪いの治った?」
「・・・・・・・・・・」
「さっき1時限目は国語で、2時限目は体育だったんだよ。
お外は暑かったからここにいた方がずっと南さんにとって良かったと思う」
「・・・・・・・・・・」
「次は図工だけど・・・教室戻れる?」
「・・・・・・・・・・」
「あぁ、お家に人が迎えに来るって先生が言っていたよね?」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・なんかあたしだけ話しているよね?うるさいよね?ごめんね・・・
いつも1歳下の弟、あっ今幼稚園の年長組なんだけどね!
その弟にも『お姉ちゃんは声が大きいから普通に喋っていてもうるさい!』って言われちゃうんだ」
「・・・・・・ううん、うるさくないよ」
私ははにかんだ笑顔を浮かべた。
「あっ!南さん、笑った!!良かった~~」
「『良かった』って・・・・自分の事じゃないのに嬉しいの?」
「うん!だって同じクラスの友達だもん!!」
「一度も喋ったことも、幼稚園も違うのに・・・どうして・・・友達じゃないよ」
「なんで・・・?そんなふうに思っていたの?じゃぁさぁ・・・今からお友達ね♪よろしくね、愛子ちゃん!!
あたしは『広子』だからヒロちゃんでいいよ」
「お友達・・・・ね。うん!お友達になってくれるの!?私は愛ちゃんでいいよ」
「うん!!わかった!!ヨロシクネ!!愛ちゃん!!」
「ヨロシクネ!!ヒロちゃん!!」

こうして私とヒロちゃんはあっと言う間に大親友となった。

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小学校の6年間は充実した日々を送り、ヒロちゃんともよりいっそう仲良くなった。
お互いの親同士も仲良くなって、6年生最後の夏休みには家族全員でテーマパークにも遊びに行った。
それもちょっと贅沢に泊りがけで楽しかったな~~。
当然中学も同じで・・・中1だけでも9クラスもあるのにさすがに同じクラスは望めないだろうな・・・
と思っていたが、ラッキーなことに1年も2年も同じクラスになった。
うちの中学は3年では高校受験だからクラス替えをしない。
・・・このまま、高校も同じところに行かれればずっとヒロちゃんと一緒だね!
一人っ子の私にとってヒロちゃんは、親友であり姉妹であるから・・・・。


そんなヒロちゃんはこのところ様子がおかしい。
部活の自主練の時もいつも校庭を見ているんだけれど・・・・お目当てじゃない人を見ているような。
お目当ての人というのは、3年生の東野彰典(ひがしのあきのり)先輩。
私も部活以外の時、ヒロちゃんに連れられてギャラリーの一人となっているうちに・・・・。
だんだんと彼が気になる存在となっていった。

ヒロちゃんは自分の心に気が付く前、東野先輩に憧れているようなことを言っていたっけ。
彼女の素直なリアクションに正直羨ましいと思う気持ちと、もしかして取られてしまうという気持ちが
入り乱れる日々だった。
ヒロちゃんとは大親友と言っておきながら、自分が気になっている東野先輩を取られたくないから・・・
彼女の好きな人は先輩じゃなくて西君と決め付けちゃっている自分が・・・嫌な感じ。
表面的にはヒロちゃんの応援をしていて、内情はそっち方面へ靡かないように阻止しているようで。
自宅に帰ってくれば、自己嫌悪の嵐~~~。
「自分自身が嫌になる――――ッ!!」と子どものように癇癪を起こして
手当たり次第、近くにあるぬいぐるみに当り散らしていた。


そんなある日、祖母に頼まれて回覧板を自治会の評議会委員さん宅に返しに行くように頼まれた時のこと。
家の前の道から1本路地を入ったところにあるお家。
評議会委員さん宅はおとぎ話に出て来そうなかわいらしいお家だった。
インターホンを鳴らして、応対してくれたのは男性の声。
もう18時過ぎだからここの家のお父さんかな?なんて思っていて玄関のドアが開いて驚いた。

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「東野先輩!?」
「君は・・・・?」
「えっとぉ・・・回覧板です。あの・・・オケ部2年の南です。」
「あぁ・・・君が噂の『コンサートマスターの愛ちゃん』だね?」
「えっ!?噂になっているんですか?・・・あのここ先輩のお家ですか?表札が違うような・・・」
「いや・・・違うんだ。ここ、じーちゃん家で俺の両親共働きだから夕食はいつもこっちで食べてるんだ
と言っても俺ん家は同じ敷地内で向こうの方に建っているけど・・・ここからじゃ見えないかな~?」
「そうなんですか」
「あっ!回覧板だね。俺、貰っとくよ、ご苦労様、ありがとう」
「はい、じゃぁ、よろしくお願いします」
「そうだ!そういえば・・・君ってよくもう一人の子と部活の練習を見に来ているよね?」
「・・・はい、ヒロちゃん・・・・いえ、北山さんとたまに見に行っています。
気が散るようなことしてごめんなさい」
「いや・・・いいよ。あの子がヒロちゃんか・・・・ふ~~ん」
なんだか意味深な含み笑いをする先輩。
どうしてなのかこの時はわからなかった。
「じゃぁ、これで失礼します」
「うん、気を付けて・・・じゃぁ、またオケ部の練習が無い時にでも陸上部の練習を見に来てよ」
「はい、ありがとうございます!!!」
私は、自分自身の嫌な部分を気にしながらもハプニングに心から喜んだ。
自宅に戻った私はスケジュール帳でオケ部の練習の無い日を
チェックして浮き立つ気持ちを抑えることが出来なかった。
翌日から校庭の片隅で朝練や放課後の部活に励んでいる陸上部を確認するのが日課となった。
ひときわ背が高いのが東野先輩、その次がヒロちゃんが気になっている西君。
それぞれに私設ファンクラブがあるのも頷けるような気がする。


「愛ちゃ~~ん!おはよう!!
今朝はごめんね~~弟と体操着を取り違えていて・・・朝からパニクッちゃったわ」
「おはよう、ヒロちゃんは大丈夫?」
「お母さんが、ご丁寧に取り違えて入れてくれたんだけれど・・・
何か朝から嫌な予感したんだよね~~
で、中身を確認したら、もう弟のじゃん!!私の体操着あんなにデカクないって!!」
「そうなんだ~~でもお母さんも大変だなんだよ。年子で中学生だったら・・・」
「確かにね~~~。小学校の時も色々工夫して目印付けていたけれど校則の関係でそれは出来ないから困ってるんだよウチの母親・・・・天然要素炸裂だからさ~~。
あっ!ねぇねぇ、あそこでトレーニングしているのは東野先輩じゃないの!?」
「・・・・そうだね」
「相変わらず、カッコイイね♪憧れちゃうな~~」
「・・・・・・・」
「ねぇ、愛ちゃんもそう思わない?」
「・・・・・・・」
「隣は・・・雄輝かな?あぁ、あの走り方は雄輝だわ・・・ねぇ、愛ちゃん?」
「・・・・・ごめん、ヒロちゃん、私、先に行くね」
「愛ちゃん・・・・?」
純粋なヒロちゃんの感情表現に嫉妬した私・・・・また自己嫌悪。
SHRから落ち込みっぱなしで今日一日中、
全てが裏目に出て結局先輩の姿も見ず部活も休んでしまった。

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表面的には普通に過ごしてヒロちゃんの恋のお手伝いをしているようなことをしていたけれど
・・・・・・バチが当たったんだ。

大親友って言ってくれているヒロちゃんは怪我をした。
オケ部の先輩がヒロちゃんのフルートのケース蓋に当たってしまい、
それが勢いよく閉まりケースの蓋に手を掛けていた
蓋の金具がヒロちゃんの左手の指に直撃してしまった。
驚いた先輩がヒロちゃんを保健室に連れて行った。
あの怪我の状態じゃ恐らく今日は部活どころじゃないから、
とりあえず部活の顧問の先生に報告してヒロちゃんの荷物を持って保健室へ行った。
養護の先生に応急手当をしてもらっているヒロちゃんはいつもの元気はなくて・・・・。
今までの自分の嫌な態度の罪滅ぼしのようにヒロちゃんの世話を焼いた。
ヒロちゃんは「愛ちゃん、ありがとう」と泣きそうな声で言った。
私もその声に心の中で「ごめんね、ヒロちゃん」と言い泣きそうになった。

保健室で帰り支度をしていたら、突然血相変えて西君が入ってきた。
さっき私がオケ部の顧問に話した後、
すぐさまクラス担任である陸上部の顧問へ報告となって
それを傍で聞いていた西君がすっ飛んできたという。
西君はヒロちゃんの手を取り、心配そうな口調で話している。
それを見た私は、西君の好きな子はヒロちゃんだと確信した。
それならばこの場は彼に任せたら良いと思い、
ヒロちゃんに病院へ連れて行ってもらえるように助言して
オマケにガッツポーズまで作って見せた。


保健室から出た私は音楽室へ行こうと階段を上ろうとした時、
恐らく西君を追いかけてきたのだろうか・・・・・?
東野先輩に階段横の昇降口で会った。
「北山さんが怪我をしたって聞いて・・・大丈夫なのかな?」
「えっ!?あっ、ハイ・・・・今応急手当して、これから西君が病院へ付いて行ってくれます」
「そっか・・・驚いたよ。
オケ部の顧問とウチの顧問が話しているのが聞こえてきた途端
アイツ・・・弾丸の如く校舎へ走っていったから
でも、心配だね・・・フルート担当だったよね?暫く吹けないね・・・」
「先輩・・・」
私はそれしか言えなかった。

きっと先輩はヒロちゃんのことも心配で西君を追いかけてきたのだろう。
でも彼に先を越されてここで追いかけるのをやめたのかもしれない。
そう思ったら、ヒロちゃんのことも含めて色々なことを
一人悩み続けていた事が溢れるように涙がはらはらと零れ落ちた。


presented by 地球の名言

紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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