2017 / 06
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※こちらのお話は一部に多少大人的表現をしています。苦手な方、嫌悪される方、18歳未満の方はご遠慮下さい。




通勤の帰宅ラッシュで駅前はごった返ししている。
なるべく人込みを避け、改札口へはエレベーターを利用し始めて早1ヶ月。
大きな駅ターミナルとなっている改札口も人、人、人・・・。
駅ビルの地下で買い物をしたかったが、
仕事の疲れもありバスに乗って自宅近くのスーパーに寄ることにした。
バスはちょうど行ってしまったばかりのようで並んでいる人あまりいなかった。
独り言で「今夜は座れそうね」と呟き、サラリーマン風の男性の後ろに並んだ。
始発なので程なくして空のバスがロータリーに滑り込んできた。
料金後払いなのでバスカードをリーダーに通し、出口近くの座席に座りホッと一息を吐く。

ロータリーには何台ものバスが停留所にて乗客を乗せ、
タクシーは十数台停車し客待ちをしている。
また家族を迎いに来ているのだろうか・・・・。
乗用車も数台エンジンをつけたまま排気口から白煙を出しながら停車している。
夕闇が広がっているせいか、駅ビルや周りのビルのネオンが眩しく感じる。

そんなことを思いながら座っていたらバスが発車時刻となり運転手の声が聞こえた。
この路線にはあまり珍しくないが女性の運転手さん。
とても運転が上手で急発進や急停車をせず、声掛けもとても柔らかな口調でとても感じが良い。
1年ほど前に今の家に引っ越してきたが、この街を気に入ったうちの一つがこのことだ。
バスは駅ビルから繁華街を抜け、住宅地の大通りを安全運転で走った。
始発から6個目の停留所で降り、目の前のスーパーへ入った。

時間も時間だけに一人暮らしの人であろうかお惣菜コーナーに数人いたのを
横目で見ながら真っすぐ生鮮食品売り場へ足を向ける。
ここのところの体調を考えて量り売りをしてくれるお肉屋さんは避け、
パック売りされている肉を数点カゴに入れた。
お魚も同様にパック売りを1個。
野菜売り場で水菜を1束、長ネギを1束カゴへ入れた。
シリアルを1箱、プレーンヨーグルトをカゴに入れてレジへ向かった。
中身を確認して週末は、鍋にしようかなという考えがふと頭に浮かんだがそれもきっと・・・
「でもきっと計画倒れね・・・」と口の中で呟いた。
その口調がとても残念そうに自分自身聞こえ苦笑いしてしまった。

レジで会計を済ませ、エコバッグに商品を入れて肩から提げた。
本当は牛乳やペットボトル飲料も買いたかったが、
それは今週末来れたらその時にしようと思った。
スーパーから自宅までの道のりは5分ほど。
程なくして自宅のマンション前に到着した。
ふと顔を上げ、自分の部屋の灯りを確認した。
「電気が点いているはずないのにね・・・」と独り言を言い、
マンションのエントランスに入りオートロックの鍵を開けた。
エレベーターで自宅階へ上がり、自宅玄関の鍵を開ける。

戸建感覚のイメージがコンセプトで1軒ごと可愛いらしい門扉が付いている。
門扉横に置いてある植木が風で煽られたのか少し土をこぼして倒れている。
荷物を内玄関に入れ、植木を直した。
今夜は寒いが日中ほどの風は吹かないだろうが、
また倒れてしまっても可哀相なのでシューズボックスの棚へ置いた。
内玄関のフットライトが自然に点き、長い廊下をぼわっと仄かな明るさにしてくれる。
リビングに入ってすぐ床暖房のスイッチを入れ、エコバッグはキッチンへ置いた。
仕事に持って行ったトートバッグはリビングの隅に置き、
着ていたコートはリビングの隣の寝室のクローゼットの中にしまった。
エコバックの中身を片付けと食事の準備に取り掛かるためにキッチンへ入り、
それと同時に給湯のスイッチを入れ入浴の準備もした。


今夜のメニューはロールキャベツとパン、ポテトサラダも作った。
自分の体調でご飯を炊けないのが残念である。
ダイニングテーブルでは足が冷えてしまいあとで辛くなってしまうので
今夜も32インチテレビの前に置いてあるコタツで食事をすることにした。
クッション代わりに座椅子を部屋の隅から引っ張ってきてテレビの前に陣取る。
一人での食事は侘しいのでテレビ番組相手にさっさと済ませることにした。
食事も終わり、食器を片付けて明朝の準備をし入浴した。
入浴後、昨夜観れなかったドラマを録画を観ながら持ち帰り残業をやった。
ドラマの展開のイイところで『つづく・・・』の文字。
主人公の男性が切なげに笑っている顔を暫く見ていた。
そして少し溜息を吐き、録画している分をHDDからすぐに消した。
ふと見上げた壁掛け時計が23時を少し回ったところでテレビのスイッチも切り
コタツの電源も切った。

立ち上がったときトートバッグの中身が見え、手帳に挟んである『それ』を取り出した。
手帳を広げて『それ』を前にして再び座椅子に座り込んだ。
不安が全身に広がるのを押さえ込むようにして所謂体育座りをした。
涙が溢れてきた。
どうする?どうしたい?この言葉が全身を不安と共に駆け巡った。

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「お疲れ様です!来週もよろしくお願いします!!」
「おうっ!シュウ!さっきの件、真剣に考えておいてくれよ?
いいな、イイ返事を待っているよ」
「ハイ、ありがとうございます、じゃぁ、失礼します」

タクシーから恰幅の良い男性と助手席に座る若い男性が手を振り、
立ち去るタクシーを見送る2人の男性が街灯下に立っていた。
「やれやれ、シュウ、遅くまでご苦労だったな」
「いえ、大丈夫ですよ。これも仕事のうちですからね」
「まぁな・・・ある種サービス業の俺らだからな」
「そうですよ、でもなんで俺なんですか?」
「まぁ、他の奴らでも良いんだがあちらがお前が良いって言ってるんだよ」
「そうですか、嬉しいことですね」
「そうだな・・・それに、まぁ、お前の活動範囲も広がって良いんじゃないか?」
「ええ、まぁ・・・」
「まぁ、お前自身の考えも大事だから、会社のことは気にするな、いいな?」
「ハイ、ありがとうございます、でもやっぱり色々考えてしまいますよ」
「ゆっくり考えろ、じゃぁ、今週末はオフだからよく休めよ」
「ハイ、お疲れ様でした、失礼します」

2人は笑顔で別れ、1人は携帯電話を片手に立ち去り、
もう1人はタクシーを降りたところから最寄の駅へ戻るように大通りを歩き始めた。
携帯電話は数回コールし、目当ての人からの応答はなく・・・
「当たり前だよな、こんな時間に起きている筈ないか・・・」と呟いた。
ジャケットの内ポケットから薄い色の付いたサングラスを出した。
流しのタクシーを拾おうかと周りを見たが
週末のこの時間では掴まえる間に自宅に着きそうだったので
首に巻いているアフガンストールを更にきつく巻き、
吐く息を白くさせながら足早に自宅の方向へ歩き始めた。
冷たい空気が喉に沁みる・・・ジャケットのポケットからマスクを出し身に付けた。


もう日付が変わっている時間帯では住宅地の歩道には歩いて帰る人もいなく
自分の横を数台のタクシーや乗用車がスピードを上げて走り去っていく。
帰宅途中の道すがらコンビニに寄り、ホットの缶コーヒーとフルーツゼリーを2個買った。
店を出てすぐ缶コーヒーを開け、冷えた身体に染渡るようにゆっくり飲み始めた。
歩きながら飲んでも良いのだがこれをやって、
いつだったか失敗してしまい服を汚したことがあったことを思い出した。
一緒に連れ立っていた人が「子どもみたい」と笑っていたっけ。
店前でコーヒーを飲み干した。
ごみ箱に大きな音をたてて缶を捨てまた自宅に向けて歩き始めた。
自宅までの道のりは一戸建てやマンションが何棟も立ち並び、
新興住宅地なので創立されて間が無しの幼稚園や小学校も建っている。
1年前ほど前にこの土地へ引っ越してきて環境の良いところだと一目見て気に入った。

暫く歩いていくうちに自宅マンションが見えてきた。
自宅のある階を見上げ仄かに灯りが点いているのを確認して
マンションのエントランスに入った。
オートロックを鍵で開けエレベーターに乗り、自宅に向かった。
門扉を開けふと横に置いてあるはずの植木を探した。
日中風が強かったのでどこかに転がってしまったのか?と思った。

夜が明け太陽が昇ったらもう一度探そうと思い玄関扉を開けた。
内玄関のフットライトが点きシューズボックスの棚に
植木が置いてあるのを確認してホッとした面持ちになった。
赤い実をつけた植木を見ながら靴を脱ぎ静かに長い廊下を歩く。
微かに野菜を煮込んだ香りがする。
香りを辿りながらキッチンへ足を運び最近購入した
外国製の鍋に大好物のロールキャベツが入っているのを確認した。
リビングのテレビの脇に置いてあるフロアスタンドがやわらかい光を放っている。
いつも自分が帰ってくるとき真っ暗だと寂しくなってしまうから・・・
という理由でこれだけは点灯しておいてくれる心配りに自分も優しい気持ちになる。


リビングのシーリングライト点け、ストールとジャケットを脱ぎキッチンで手を洗った。
少しぬるくなってしまったロールキャベツのスープだけを
マグカップに注ぎラップをかけ電子レンジで温めた。
今夜は付き合い程度のアルコールを摂取していた。
一応食事もしていたがさすがにこの時間で
小腹が空いていた自分にはちょうど良かった。

こたつの上に持ち帰り残業だろうか・・・。
折り紙の束と数個のメダル型の完成品があった。
それを指先でいじりながら、これを作ったであろう人のことを思い出していた。
携帯電話の電源を切りおもむろに立ち上がり、
マグカップを片付けて入浴するために浴室へ向かった。

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スウェット上下に着替え、濡れた髪をバスタオルで乾かしながら寝室に入った。
キングサイズのベッド横のサイドテーブル上のスタンドは数個のLEDライトが
蝋燭のような光をたたえている。

自分の立っている位置より反対側に人型にこんもりと盛り上がっている。
横を向いて寝ているのだろうか・・・寝顔は見えないが安らかな息遣いだけが聞こえる。
そっと掛け布団を捲りそのこんもりとした膨らみに寄り添うように横になった。
自分に背を向けて眠っていてうねるような黒髪が自分の顔に掛かった。
シャンプーの香りであろう、自分の鼻孔をくすぐり無意識にもっと香りたくて
腰に手を回しやや強めに力を入れて自分に引き寄せた。
うなじに唇を寄せて安眠を妨害するつもりはないが数回キスを落とした。

「うぅ・・ん、誰?・・・修君?」
「ごめん・・・起こしたか?」
「う・・・・んん、起きちゃったかも・・・」
「誰って言ったよな?俺以外ここに入ってくるのは誰だよ?」
「う~~ん、わかんない・・・よ、修君、お風呂入ったの?」
「うん、入った。温めておいてくれてありがとう」
「ううん、お酒飲んで来ると思っていたからぬるめにしておいたの」
「あぁ、ゆっくり入れたよ・・・でも朝にもう1回入るよ」
「そうしてね・・・今週末は・・・予定通りなの?」
「うん、予定通りだよ。こっち向いて・・・幸乃(ゆきの)ちゃん、顔見て話したい」
「こっち?あぁ、修君の方ね。今何時?」
「・・・時間は幸乃のキライなお化けが出やすい時間」
「イヤだっ!もうっ」

そう言いながら幸乃は修二にしがみ付いた。
それを切欠に修二は自分の腕の中に幸乃を閉じ込めた。
髪を梳きながら額にキスをして彼女を仰向けにして真上からジッと見つめた。
そしてもう一度彼女の額に優しいキスを落とした。

「修君、どうしたの?」
「ううん、幸乃ちゃん、いつもごめん。寂しい思いさせて・・・」
「そんなことないよ・・・お休みの日はなるべく一緒にいてくれているでしょう?」
「それでも・・・」
「イイのよ。修君、私だって仕事が入ってしまえば一緒にいられないもの」
「・・・・・」
「全部承知で一緒にいることを決めたんじゃないの?それとも・・・もう後悔しているの?」
「そんなことないっ!!」
「ふふふ・・・ムキにならないで・・・寂しく思うときもあるけれど、全部自分達で決めたんだもんね」
「幸乃ちゃんは強いな・・・」
「ううん、そうじゃないよ・・・修君の傍にいられるからこんな風に考えられるんだよ」
「幸乃・・・・愛しているよ」
「私も・・・大好き・・・愛しているわ、修君」


修二は幸乃の瞳の中に自分がいることを確認して彼女の唇にキスを何度も落とした。
キスは徐々に深くなり何度も角度を変え
彼女のパジャマの上から右手でやわらかな胸を掬うように触り
胸の頂が徐々に固くなるのを布越しにもわかった。
パジャマの裾をたくし上げ、利き手を忍び込ませ直接彼女の肌に手を這わせた。
キスの合間に幸乃から微かな甘い声を聞きながら、修二は何度も「愛している」と囁いた。

パジャマのボタンを器用に外し、丸い柔らかなピンクの頂に唇を寄せた。
もう一方へは親指と人差し指でコリコリと愛撫した。
胸を甘噛みされるたびに幸乃は背を反り、
自分の身体の中心から彼を欲する想いが溢れ出てきた。

幸乃は修二の首に自分の腕を絡ませていった。
修二は彼女の中心から溢れ出てくるものに指を絡ませた。
もっと自分を欲する想いを強くするために
何度もそこを優しく指で、唇で、お互いが満足するまで味わった。

「修くぅ・・・ん」
「幸乃!」

そして彼女の全てを開き、彼と共に恍惚の世界へとけていった。


翌朝は、お互いの目覚まし時計もセットしていないのに
幸乃はいつも起きる時間に目が覚めた。
起き抜けの気分の悪さは多少あったが、
我慢できるほどだったのでそのままベッド中で
修二の顔をジッと見つめたままでいた。

彼に抱かかえられるように眠っていたせいか
身動ぎするのも彼の脱力した腕をそっと退かしながらした。
出逢ったばかりの頃、なんて睫毛の長い人なんだろうと思ったものだった。
今穏やかな寝息を立てている彼はその長い睫毛に縁取られた瞼を閉じ
決して自分を逃さないとでも言うようにしっかり私を抱き締めていた。

暫くジッとしているうちにいつも気分の悪さが襲ってきて
素早く彼の腕から逃れベッドサイドの収納ボックスに引っ掛けていた
ローブを羽織り寝室を飛び出した。

「・・・・幸乃ちゃん?」
腕の中にあるはずのやわらかい感触がなくなり、
目が覚め寝室の入り口に向かって修二は寝返りを打った。
サイドテーブルの時計で時間を確認してから自分も起きた。

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修二は寝室から出てこたつテーブルの上に置いてある自分の携帯電話を手に取った。
携帯電話の電源を入れ着信やメールを順に確認していく。
身内からもメールが入っていて文面を見ながら眉間に皺を寄せた。
その間、リビングには幸乃はいなく洗面所の方で激しく水を流す音がした。
きっと洗濯をし始めているのだろう・・・と特に気に掛けず彼女に話し掛けた。

「幸乃ちゃん!お鍋火にかけても良い?」
「お風呂済ませたらコレ食べたいんだけど・・・」

かなり大きな声で話しかけたが、幸乃からの答えがなかったので
少し不審に思った修二は洗面所の方へ行った。
洗面所の扉が閉まっていたので勢いよく開けた。
そこには手も顔も泡だらけの顔を洗う幸乃がいた。

「修君、なぁに?」
「あぁ、顔洗っていたのか・・・」
「うん、ごめんね、聞こえなかったから・・・どうしたの?お風呂入るでしょ?」
「うん、入るよ。あっ!そうだ!!
ロールキャベツを風呂から上がったら食べたいから火にかけておいたよ」
「ありがとう、でも弱火にしてくれた?ホワイトソースだから・・・」
「えっ!?弱火?してねぇよっ!こげちゃうね」

そう言うや否や修二は洗面所を飛び出しキッチンへ走りこんだ。
その光景を見た幸乃はクスクス笑った。
修二の入浴準備をし、自分の口をよくすすぎ先ほどの気分の悪さを一新させるために
頬を数回軽く打ち自分自身に気合を入れた。
そして洗濯機を回したいため、修二に洗濯物を入れてくれるように大きな声で入浴を促した。


「朝風呂は、気持ち良いね~~♪」
「そうよね~~贅沢だよね」
「やっぱりここの家で良かったってこの頃富に思うよ」
「そう?角部屋だから水周りにも窓が付いているしね。
それに廊下にもちゃんとした窓が付いているから明るいよね?本当にここで良かったよね」
「そうだな・・・俺の稼ぎでちょっと高望みかなって思ったけど買って良かったな!
以前住んでいた賃貸は社宅みたいな物でそれこそ身分相応じゃなかったしな~」
「うん、そうね。環境も良いしね~」
「まぁ、俺は良いとして幸乃ちゃんは通勤するのに
駅が遠いのだけは悪かったな~って思うんだよ」
「いいの、いいの、バスに乗れば良いし」
「ところで、さっき俺の実家からメールあったけれど・・・
今日夕方ご飯でも食べに来ないかって」
「そう・・・・」
「どうした?」
「ううん、なんでもない・・・・」
「まだ気にしているのか?」

幸乃は否定するようにふるふると首を横に振った。
修二は途端に元気がなくなってしまった向かい側に座る幸乃の手を握った。
お喋りをしながら食事をしていたが、ふと彼女の食事があまりすすんでいない事に気が付いた。
目の前にあるスープ皿に入っているロールキャベツは1個しか入っていないが手付かず状態。
野菜サラダもプチトマトに珍しくマヨネーズを付けている。
朝はコーヒーを欠かさなかった彼女が珍しくミルクティを飲んでいる。
心なしか顔色が優れないような・・・。
特に愛し合った後の翌朝は寝不足になると以前話していたことを思い出した。
もう一度幸乃の手を握りながら親指で手の甲を擦りながら「大丈夫?」と訊き
彼女がコクンと頷いたのを見てから修二もニコッと笑った。


食事も終わり、修二は休みの日には必ずやることで
食器の後片付けとガステーブルの掃除を率先してやった。
その間、幸乃はベランダ横にある室内干し用のサンルームに洗濯物を広げた。
大人2人の生活なのであまり量が無いのでそれもすぐに終わり掃除機をかけ始めた。

各々が休日の午前中の役割分担をこなしている間、CDコンポのスピーカーからは
耳に心地好い音楽が流れていた。
時折、お気に入りの音楽を口ずさみながら・・・・。

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冬の空特有で風が吹くと耳が痛く感じる。
でも今日の2人でのお出掛けは修二の運転で
郊外に新しく出来たアウトレットモールに行く。
そこに出来た輸入家具店に前々から行きたかったのですぐに出発した。

「休日だから混んでいるかな?」
「そうね、もし入れなかったらまたの機会にしようね」
「そうか?でもそうしたらなかなか時間が取れないぞ!?」
「うん、でも仕方がないじゃない」
「いや、幸乃ちゃん今日は一日掛かりでも絶対に行くぞ!オ――ッ!!」
「きゃははは、修君、そんなことで拳揚げないでよ~~」
「だって楽しみにいたんだよ?」
「それって・・・家具屋さんに行くこと?それとも私とのお出掛け?」
「両方だよ!!」
「よろしいっ!それでOKです♪」
「は~~~、幸乃先生は厳しいからな~~~」
「そんなこと無いですっ!!」

目的地までの車中、久し振りにデート気分を味わえることがなんだかお互い嬉しくて、
妙に胸の辺りがくすぐったくて2人は沢山笑った。

修二の職業柄、本人とわからないような服装が多い。
この日も薄い色の付いたサングラスにニット帽、
ダウンジャケットにデニムのパンツという出で立ち。
身に付けているものは一目見て有名ブランドのものではなく
購入したところは大手アパレル会社の量販されている洋服ばかりだ。
それでも滲み出るオーラは隠し通されるわけでもなく
人込みなどで誰か一人が気が付けばあっと言う間に人だかりになることはしばしばあった。
週末のアウトレットモール、どれだけの人が集まるのか?
皆目検討がつかない・・・・。
もしそうなった場合、いつも通りに別行動を取れば良いことだと
助手席に座っていた幸乃は思った。

「修君、確認ね・・・また人が集まったらいつも通りね。
携帯に電話してね、いい?」
「あぁ、またかよ・・・」
「だってしょうがないでしょ?」
「なぁ、もういいじゃねぇか?」
「でも・・・修君のイメージもあるし」
「イメージなんか勝手に周りが作り上げたものだし、
俺自身のことは見てくれてないだろう?」
「そんなこと言ったら元も子もないじゃないの・・・」
「いいんだよ!」
「修君・・・怒ったの?」
「怒ってない!!」
「怒ってるよ・・・だって鼻の穴が膨らんでるもん」
「・・・・クッククク、幸乃ちゃんには参った~そうだよ怒ったよ、
でもそろそろ俺達の事をきちんとした形で発表しなきゃ、俺はそのつもりだよ・・・」
「そう・・・なの?じゃぁ、私も心づもりしなくちゃいけないよね?」
「あんまり深く考えなくて良いよ。俺達の中がどうかなるわけじゃないし
それと・・・ちょっと幸乃ちゃんに相談があるんだ」
「何?」
「う・・・ん、まぁ、今じゃなくて良いよ。とりあえず帰宅してから話すから」
「うん、わかった」

程なくしてアウトレットモールの大型駐車場に入るための列の最後尾に車を停車させた。
思ったほど行列は並んでいなく、このままだったら間もなく敷地内に入れるだろうと思った。
彼らの前に並ぶワゴンタイプの車に『赤ちゃんがのっています』という
ステッカーが貼ってあるのが見えた。
幸乃はそれを凝視するように前を向いたまま思い詰めたような面持ちだった。
少しそれが気になる修二だった。

「前の車に赤ちゃんが乗っているのかな~?」
「・・・・・・」
「幸乃ちゃん?どうしたの?この頃、ぼんやりすることが多いよね」
「あっ、ううん、何だっけ?」
「いや・・・いいよ、なんでもないから」
「そう?」

やはり様子が気になる修二は買い物が終わったらゆっくり幸乃の話を聞こうと思った。
きっと何か・・・・悩み事があるのだろうと愛しているが故の本能で感じ取った。


presented by 地球の名言

紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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