2017 / 08
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「こないだは散々恥を掻かせてくれたな!もういい、別れてやる!
別れてから縋り付いても、もう知らないからな!!」

ケータイの留守電に周りの喧騒と共にアツシからの怒鳴り声の文句が入っていた。
これに気が付いたのは、着信があってから丸2日後のこと。
実は2日前から仕事に忙殺されていてケータイをチェックする暇も無かった。
そして1日前は朝一で打ち合わせがあったので、
すぐにマナーモードにしてそのままチェックする間もなく電池切れになってしまった。
で、帰宅後すぐ充電器に置いた途端着信履歴のメッセージ。


久しぶりに余裕で退社して、上機嫌で大学時代の女友達と食事して
他愛もない話に花が咲いて、近々仲間の結婚式で再会を約束して
家族ともその日中に会えたと言うのに。

そもそも私とアツシは付き合っていたのかな?
ううん、少なくとも私は付き合っていたという自覚は無かった・・・かも。
だって、私は・・・・。


アツシと初めて会ったのは、職場関係の合コン。
それもその日は、私は人数合わせ要員だった。

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その日は、朝からついていなかった。
目覚まし時計は、夜中に電池が切れ出社時間ギリギリで起床した。
着替えてから部屋から出ようとしたとき、
階段のところで5歳年上の姉と鉢合わせになり
姉の持っているバッグの金具が私の足に当たり見事なデンセンを作った。
即行ストッキングを履き替え、朝食を横目で見ながら母特製の野菜ジュースだけ飲み
そして最寄駅まで猛ダッシュ!!

いつも乗る地下鉄にはどうにか間に合ったのも束の間、
混んだ電車の中で走行中の揺れで私の方に乗客が雪崩込んで
足を踏ん張り損ねて足を捻ってしまった。
それもどうにかやり過ごし、下車駅の改札口でももう一度足を捻って転びそうになった。
挙句お気に入りのパンプスのヒールが折れてしまうという。
とりあえず職場ではサンダルを履いているので
それに履き替え昼休みには近くの百貨店で靴を買いに行くことにした。

でも忙しさは尋常ではなく・・・・昼食を摂るのも儘ならないほどで、
結局スタイリストをしている姉に頼んで私物の靴を借りることにした。



「美晴ちゃん、今夜合コンがあるのだけれど・・・ちょっとメンバーが足りないから
今度デザートバイキング奢るから出てくれない?」

3年先輩の同じ庶務課の礼子先輩からの頼み。
いつも何かとフォローしてもらっているから断りきれなくて・・・・。

「ハイ、わかりました・・・でもちょっと約束時間には間に合いそうにありませんがいいですか?」
「良いわよ!出てくれればOK!OK!1~2時間そこにいてくれればもう『ドロン』していいからね」
「・・・・・・礼子先輩、『ドロン』ってもう死語ですよ~~~」
「あら?そう?・・・ごめんね、もうオヤジ化しているのかもね」
「・・・・礼子先輩・・・それでいいんですか?」
「良いの、良いの♪若ぶっていても所詮私は『昭和』生まれだもの~~」


こんなやりとりがあってかなり気が進まないが合コンに出ることにした。

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約束の時間から1時間近く遅れて、合コンをしているレストランに着いた。
もう既に礼子先輩は半ば出来上がった状態で・・・・。
お酒が弱いのに、お酒の席が大好きな先輩。

「美晴っ!!おっそーーーーい!!もう始まっちゃってるよ」
「遅れてごめんなさい、STプロモーションの山本です。」
「美晴は遅れたから、もうそこの席しか開いていないよ~~」
「あっ、ハイ、いいです、ここで・・・
(ここなら出やすいしね、先輩ったら出やすい場所ちゃんと用意しておいてくれたんだ)」

そう言いながら、端っこの席に座った。
ここって・・・みんなのこと見渡せる結構イイ席かも。
私は少し残してきた仕事の事を気にしつつ、席に着いた。

すぐ隣にいた男性が話し掛けてきた。
そして後から来た私のためにテキパキと注文をしようとしている。
そうこの人が井上篤(いのうえ あつし)

「山本さんだっけ?・・・・何飲む?適当に頼もうか?」
「実は・・・まだ仕事が終わっていなくて。もう少ししたら
オフィスに戻らなくてはいけないんです。・・・・できれば
ソフトドリンク系・・・えっと、アイス・ティにしてください。」
「仕事熱心なんだね~~。俺、仕事をバリバリやる女性って素敵だと思うよ」
「そうですか?でも仕事を任されていれば当然じゃないですか?」
「格好いいよね!大手プロダクションのキャリアウーマンって感じで・・・」
「そんなことないですよ・・・(なんか違うな~~軽い人だわ)」

合コンという場に慣れていない所為か、
それともすぐ隣にいる男性に対してなのか
私には違和感を感じる雰囲気だった。

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隣に座っているアツシには悪いけれど、
彼の話をなんとなく・・・な気持ちで聞いていた。
専ら話を聞く方側に徹して、暫しアツシを観察した。

趣味は、アウトドア中心。
特に冬はスキーやスノボが好きで、前カノとはスキー場で知り合ったとか。
その彼女とは1年前に別れたらしく、今はフリーだそうだ。
一見イケメン系で本人もそれをかなり意識しているように私には感じられた。
第一印象・・・・
やっぱり軽い人だな、自意識過剰というか・・・・
私には最も苦手なタイプだな・・・・という印象を受けた。


「ちょっと・・・失礼します」
アツシの傍にいるのがしんどくなって私は、化粧室に立った。
それと同時にバッグの中のケータイが鳴った。
化粧室でオフィスで未だ残業している渡辺チーフからのメールだった。


「礼子先輩、すみません・・・・
渡辺チーフから戻ってくるように催促メール来ちゃいました」
「イイわよ~美晴、フェニックスの件でしょう?
ここはイイから戻りなさいね」
「はい・・・少し仕事が残っているので」
「それに・・・・剛クン、えっとぉ
渡辺チーフがブッちぎれても嫌だしね」
「ええ、ブッちぎれるんですか?」
「そうよ~~!!手に負えないくらいね!」
「すみません、これで失礼します」

茶目っ気たっぷりの表情で話す礼子先輩や
他に人達に軽く会釈してその場から離れた。

礼子先輩、相変わらずだな~。
渡辺チーフとは付かず離れずの良い関係でお付き合いしているのね。
私にもそんな人が見つかるかな・・・と思いながら足早にオフィスに戻った。
その後ろからアツシが付いてきているとは知らずに。

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時間外なので自社ビルとはいえ、
正面玄関はさすがにセキュリティの関係で閉まっている。
なので、社員証をまた新たにバッグから出そうとして・・・
「あれっ?無い!?」
私は今夜の合コンに間に合わせるために
急いで上着を着たりしてバッグをロッカーから取り出して
通用口専用のカードキーにもなっている社員証を忘れてきたことに気が付いた。
ケータイで電話して渡辺チーフに降りてきてもらって、ここを開けて貰おうか
それとも警備員さんの所へ行くかどうしようか迷っていた。

「あれっ?そこにいるのは美晴ちゃん?・・・・
やっぱり美晴ちゃんだ!なんでこんな時間にここにいるの?」

薄暗い通用口近くに大柄な男性が大きな声で話しかけてきた。
誰もいないと思っていただけにかなりギョッとした顔で振り向いてしまった。
そこにはフェニックスのマネージャーの足立さんがいた。
・・・・・厳密に言えば、足立さんの後ろにフェニックスのメンバーがいた。

「おっ、お・・・おはようございますっ!」
私は、どこかの兵隊さんよろしく最敬礼してしまった。
この業界、朝だろうが昼だろうが夜だろうが・・・
はたまた深夜だろうが挨拶は『おはようございます』
コレに慣れるまで半年は掛かった覚えがある。
先に業界に入っていた姉から色々伝授してもらっても
なかなかこの習慣だけは慣れなかった。
足立さんが、カードキーを出して入り口を開けた。
それに続いてメンバーもそこを通り抜けた。

「美晴ちゃんは?出たの?入るの?」
「へっ?私・・・・入れなかったんです、ロッカーに忘れちゃって・・・・
入ります!入りたいです!!入らせてください!!!」
「じゃぁ、どうぞ」
「は、はい!失礼します・・・・」
言っていて恥ずかしくなってきて一気に捲くし立てるように話しながら、
足立さんがガラス戸を押えて待ってくれているのを恐縮しながら入った。


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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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