2017 / 08
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Page.138

きらきら、きらきら―――――――
  ぴかぴか、ぴかぴか―――――――
    くるくる、くるくる―――――――

光を取り込んで、小さな小さな銀河は綺麗な世界を見せてくれる。
星のカケラは小さくとも・・・・・その中に見える大きな星になる。
悲しいことも、寂しいことも、嫌なことも、忘れさせてくれる。

ほら、お兄ちゃん・・・・
見えるよね?
一度として同じ星には見えないね。

うん、真凛(まりん)・・・・
見えるよ。
一度として同じには見えないね・・・・・
大好きだよ、僕の真凛。

きらきら、きらきら―――――――
  ぴかぴか、ぴかぴか―――――――
    くるくる、くるくる―――――――

お兄ちゃん、あたしも・・・・大好き。

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Page.139

「真凛、ここにいたの・・・・」
「ええ、紀(のり)ちゃん、もう行くんでしょう?」
「真凛も一緒に・・・・。ずっと私達一緒だったじゃない」
「ううん、私はここにいる。ここで『星』を探したいから・・・・」
「一緒に行って!彼も同じに・・・
工房を持たせてあげるって考えているわ、ねっ!!だから・・・真凛」
「ありがとう、でも・・・これ以上紀ちゃんをキライになりたくないの、
これ以上みじめな気持ちさせないで・・・お願い・・・」
「真凛・・・・まだ・・・・」
「違う、そうじゃないって・・・わかったから、
だからここにいるの・・・紀ちゃん幸せになってね」
「真凛、わかった・・・ごめんね」
「紀ちゃん、謝らないで・・・」

無二の親友、いえ、一緒に育った時期もあったから姉妹かな。
三崎紀江(みさきのりえ)ちゃんは今日結婚する。
私達2人のお父さん代わりだった
小山牧師の立会いのもと愛する人と人生を歩んでいく。

彼は、私の高校の同級生だった。
高1の二学期のときに転校して来た、物静かな人だった。
部活も同じ美術部に入り、彼の一挙一動が気になり
それは・・・初恋だったのかもしれない。
その年のクリスマス礼拝に彼を連れて行った。
とても楽しく過ごせると思っていた・・・。
でも、彼は私とは単なるクラスメートとして付き合っているだけで
既に養女になっていた紀ちゃんと仲良くなっていった。
イエス様の生誕を祝う厳かな礼拝は、悲しみの礼拝となった。


あれから・・・7年。
2人の門出のために心を込めて作った、
星が煌く万華鏡を気に入ってくれるだろうか。
制作中は無になれた。
心の整理がつくと思った。
諦められると思った。
でも、でも・・・・羨望と嫉妬と・・・・
心の風が吹き荒れて自分自身が嫌いになった。
「どうして?私じゃ、ダメなの?」
そんな時、山の里教会で静かに佇んでいれば私の心の風は凪いでいった。


ここは私が好きな場所。
ここにいれば安心できる場所。
ここしか居場所がなかったのかもしれない。
ここで『星』を見つけよう・・・・そう思った。

いつかここで一緒に『星』を見たお兄ちゃんに今凄く会いたい。

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小山牧師の前で2人誓いの言葉を述べる。
私は、紀ちゃん側の椅子の一番後ろに座っている。
彼らの姿が涙でかすむ。
本当に心から祝福したいのに、紀ちゃんの幸せそうな姿を覚えていたいのに、
涙が邪魔をしてよく見えない。

「真凛、感動しているの?」
「・・・・うん、そうみたい」
「色々あったけれど、祝福してあげようね・・・
でも苦しかったら、無理しないでね」
「ありがとう、雅(みやび)お姉ちゃん」

私の隣にスッと座ってきたのは、
小山牧師の娘の10歳年上の尾島雅(おじまみやび)さん。
今は結婚して姓は変わってしまったが、
ここの教会近くに居を構えているのでこうして結婚式があるときや
礼拝があるときは手伝いに来る。
私のよき理解者であり、相談相手である。
両親の愛情を知らないまま、
ここで育った私にとって雅お姉ちゃんは本当の姉のような存在である。
旦那様は地元では有名な画廊を経営されている方で、
この人は人生の中で怒った事がないのであろう・・・と思うくらい温和な人である。
この私を妹のように接してくれる、大事な家族である。


式の間中、膝に置いていた私の拳は関節が白くなるくらいギュッと握っていた。
小刻みに震えていたらしく・・・。

「真凛、無理しないで・・・苦しいのね、控え室にいる?」
「ううん、大丈夫・・・ここにいる。
ここで・・・紀ちゃん達を祝福しないと多分、彼らから卒業できないんだと思うから」
「そう・・・わかったわ・・・真凛は強くなったね。お姉ちゃんは嬉しいよ」
「お姉ちゃん・・・」

両の目から涙が溢れた。
そうなったきっかけは・・・・。
紀ちゃん達がこちらを向いて列席者から祝福の拍手を受け始めたから。
こちらに近づいてくる2人にちゃんと「おめでとう」と言えるかな?
ううん、頑張って言わなくちゃ。独りで前に進むために・・・・。

Page.141

「真凛、ごめんなさいそれと・・・ありがとう。あなたのお陰で幸せになれる。」
「・・・紀ちゃん、高田君おめでとう。」
「山里・・・ごめん・・・ありがとう」
「もうこれ以上、真凛に謝らないで!」
「・・・・雅さん・・・」
「あなた達、いいえ、紀江ちゃん、こうなることをあなたは最初から望んでそれを突き通したのよ。
2人で詫びる気持ちがあるのなら言葉に出さず、あなた達の幸せの下には真凛の犠牲があったと
その十字架を背負ってこれから生きていって。私が言いたいのはこれだけよ・・・」
「雅お姉ちゃん、もういいから・・・」

列席者の席の最後列に来た時、
彼らの姿を見た雅お姉ちゃんが私の気持ちを代弁してくれたようだった。
私が制しなかったら恐らくお姉ちゃんは、溜まっていた気持ちをぶちまけていたと思う。

突き刺すような紀ちゃんの視線から逃れて私は、雅お姉ちゃんの影に隠れようとした。
でもそれは許されず、高田君が紀ちゃんにも聞こえるように一言言った。

「俺、やっぱり・・・以前は山里のことを・・・・これだけはわかって欲しい」
「何を今更っ!御前で懺悔するの?ここで全てを、それぞれの言い訳を聞いてどうなるの?
真凛の気持ちをそれぞれが踏み躙っているのよ!!
私はあなた達が私の大事な妹・真凛にしたことを決して忘れないから」
ほんの1~2分も満たない言葉のやりとりだったが、一世紀も過ぎたような長い時間に思えた。
次の瞬間、振り向いた時には彼らは礼拝堂の外に出ていた。
私は崩れるように座席に座り込んだ。

「真凛、大丈夫?このままお母さんと母屋へ行った方が良いわ、
ほら、お母さんがこっちに来るから連れて行ってもらいなさい。
お母さん、真凛、もう限界みたい。あっちに連れて行ってあげてくれる?」
「そうなの?あぁ、真凛、顔色が悪いわ。すぐ休んだ方が良いわね。歩ける?」
「やよいお母さん、大丈夫・・・これで前に進める・・・」
「わかったから、真凛、母屋へ行きましょうね」

私はやよいお母さんに抱えられるように礼拝堂から出た。
渡り廊下の窓から2人を祝福する歓声が聞こえた。

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「真凛、今日は疲れているから工房には行かないのよ、いい?」
「やよいお母さん、でも・・・・はい、わかりました」
「いい子ね、今日だけは細かいことしないでね?」
「はい、心配掛けてごめんなさい」
「いいのよ、真凛は家族なんだから・・・そんなこと気にしないでね」

やよいお母さんがリビング横の4畳半ほどの和室に
簡単に布団を敷いてくれたのでそこに横になった。
この日が来るまで色々な事がありすぎて心身ともに疲弊していたのだろう。
私はあっと言う間に寝息を立てて眠ってしまった。

私が眠っている間に紀ちゃん達やそれぞれの両親が挨拶に来た。
彼らはこれから披露宴のために近くのホテルへ行くという。
小山牧師夫妻に出席するよう強く薦められていたが、丁重にお断りしたようだ。


特に紀ちゃんの養父母の三崎夫妻は、幼かった私を引き取るつもりだったのだが当時色々あって・・・・
結局夫妻は紀ちゃんを引き取り正式に養女とした。
実子がいなく事業を大きく展開していた夫妻は後継者として身寄りの無い子を引き取りたかったという。
私が幼い頃は山の里教会は乳児院と養護施設を併設されていたため、
紀ちゃんは4歳から7歳までここで過ごした。

私の場合、教会前に生まれてすぐ捨てられた形だったらしい。
姓もない赤ん坊に同情した当時小山牧師が引き取る形で私は家族同様に育った。
私がこの教会へ来た日は・・・・置き去りされた日は・・・・
小雨降る4月の朝だったという。
ピンクのおくるみに包まれて・・・その中にメモ書きで
『真凛と名づけました。私には育てられません。どうかこの子をよろしくお願いします』
小さな万華鏡にメモが留められて入っていたらしい。
姓は『山の里教会』に因んで『山里真凛』と名付けられた。
その万華鏡は、今も私の宝物であり、産みの母であり・・・・
そして『大好きなお兄ちゃん』を思い出させる。
私もこれを制作する工芸家となれば、
きっと母にも、お兄ちゃんにも会えるような気がして
・・・そして『星』が見つかるような気がする。


presented by 地球の名言

紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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