2009 / 08
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国際化が進んだとはいえ日本では驚くような、
一路の行為に周囲の大学生からの視線を
一瞬で羨望の眼差しに変えそれを
一身に受ける状態になったのは言うまでもない。
その中でも勇気のある先輩数人もいて
そんな状況の私達に果敢にも質問を投げかけてきた。

「ねぇ、君、その子誰?」
「後輩みたいだけれど・・・何学部?」
「あなた、どこかで見たことあると思ったらテニスサークルの箕面さんね?」
「その彼とどんなご関係?」

それはもう矢継ぎ早に浴びせられる質問の嵐。
私はひたすら俯いてこの場をやり過ごそうと思っていたけれど
周囲の質問や一路に対する興味の熱は一向に収まらないようだった。

「すみません、1人ずつ話してください。
俺、彼女に用事があってここに来たんです」
「君には聞いていないんだけどな~?
箕面さんだっけ?彼氏?
そうじゃなかったら彼だけお姉さん達とあっちで遊びましょうよ!」

腕組をして一路を見上げるように
同じサークルの先輩が一路の言葉を制するように話し、
私を掴まえている反対の腕に手を絡ませようとした。

「ハイ!箕面さんは退いてね。それに私達を差し置いてちょっと生意気よ!
サークルの部長からも好かれているんだから・・・まったく、あなたって人は・・・」
「あ・・・あの・・・でも・・・」
「すみません、やめてくれませんか?」

一路の言葉には優しい響きがあったが、目は恐いくらいに冷たかった。
そして身を捩るようにして先輩の手を自分の腕から外した。

「彼女が高校時代から付き合っています。
今日は彼女に逢いに来ました。
俺は『あなた方』とは遊びたくありません、失礼します」

私と手を繋いだまま礼儀正しく頭を下げ、その場から立ち去った。
もちろん私の手を繋いだまま・・・。
キャンパス内の研究棟のある区域まで、
まるでキャンパス内を知り尽くしたかのように
私の手を引っ張ったままどんどん奥へ歩き続けた。

「一路!痛いよ!そんなにグイグイ引っ張らないでよ!」

そう、大きな声で訴えたが
その言葉を完全に無視して一路はひたすら歩き続けた。
いや・・・歩く速度ではなく私にとっては小走りに近かった。
息も上がるほどの距離を歩いた頃、やっと彼は立ち止まった。
研究棟が立ち並び、楕円形のロータリーの近くにある大きな樫の木の傍だった。

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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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