2009 / 09
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皆様、こんばんは。

『友達以上、恋人未満』はこれで無事連載終了です。
一時期PCが”昇天”というアクシデントもありましたが、連載終了までたどり着ける事ができました。
最後までお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

こちらのお話も番外編でその後の一路と凪子を追いかけていきたい作品となりました。
それに関しては、今はまたの機会に。。。ということでお許しください。

シルバーウィーク後、長男の運動会・長女の文化祭があり。。。
相変わらず私のオフラインは多忙を極めておりまして。
いったい私の本職は何?と自分でも疑問符がいっぱいな生活を送っております。
なので、次回作は落ち着いたらUPしていこうと思います。
そして変わらずお付き合いいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします。



                  紫苑あかね拝


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桜の花びらは殆ど散ってしまい葉桜も趣があっていいなと思いつつ
学生服とは違うスーツで身を包み、
彼女の合格発表と同じ場所に立っていた。
まだまだあどけない顔つきの人もいれば、
自分より何歳かは年上であろうと思わせるような人もいる
大きな講堂に続く道は新入生やその親などでいっぱいだった。

あの日・・・・。
凪子に心のうちを吐露した日、俺は彼女に抱かれた。
お互い初めてのことでも互いの心を満たすことができた。
ただただ優しく、俺はまるでゆりかごに揺られているかのように安心した。
そしてその日を境に俺はがむしゃら勉強に没頭した。


「一路、母さんと一緒に先に講堂へ行っているぞ!」
「ああ、いいよ。俺は・・・学部ごとに着席するみたいだから」
「そのようだな、じゃぁ、終わったら、携帯に電話しろよ。
帰りはどうするか、母さんが気にしているみたいだから・・・」
「了解!じゃぁ・・・また後で・・・・あっ!親父!」
「なんだ?」
「いや・・・さぁ、別に今言うことじゃないけど・・・
でも、あのさぁ、今までありがとう。親父のおかげで人生の目標が定まったし
これからもよろしく、それと・・・お袋のこと、もう苦労させんなよ!」
「一路・・・そうだな、そうするよ、大切な人だからな・・・
お前も彼女の手を離すんじゃないぞ」
「わかっているよ、そうするよ、じゃぁ、また!」

俺は父親と短い会話をしてかた入学式に臨んだ。


思いのほか時間の掛かった入学式を終え、
講堂の大きな扉前で「う~んっ!」と軽く伸びをした。

父親に電話をし、いつかの樫の木の傍で待ち合わせをした。
式の間中あくびを何度もかみ殺して凌いでいたので
電話を切った後ドッと疲労を感じてしまった。
きちんと結んでいたネクタイが急に息苦しさを感じ、おもむろにネクタイを緩めた。

「一路っ!」

講堂の階段下に淡いオレンジ色のサマーニットのチュニックと黒いパンツを着た
凪子が春風に少し伸びたウェーブのかかった髪をなびかせて
小さく手を振りながら近づいてきた。

「凪子!?なんでここにいるの?」
「式が終わるまで待っていたの。入学おめでとう!また、同じ学校に通えるね」
「でも・・・学部は違うし、学年だって違うし・・・」
「あたりまえじゃん!一路が中学生のときと同じに3年離れているんだもん。
そこは仕方ないよ。でもね、私はまた一路と同じ学校、大学に通えることが何より嬉しいのよ」
「凪子・・・・」
「いつも、これからも、ずっと・・・一緒ね、絶対よ?
私にとって一路は・・・友達以上の存在だから・・・さぁ、行こう!」
「どこへ?」
「うん?あっちよ」

そう言った凪子は照れ笑いを浮かべて
自分たちの位置からも確認できる樫の木の方へ指を指した。
うなずきながら彼女の手をしっかり手を取り、
そこで待つ人たちに向かって2人同時に歩き出した。





                ―おわり―

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「俺、来年で高3になるけど・・・受験はやっぱりここの大学にしようと思ってる。
凪子が通っているというのも一つの動機だけど、でも一番の理由は・・・
親父と同じ職業を結局選んだよ」
「医学部なの?」
「うん、凪子も知っていると思うけれど親父にはよく会っていたから
それに男同士の話もあって、その延長上で将来のことも相談していて」
「そうだったのね・・・それで?」
「それで、親父の仕事を・・・見る機会もあってさ、
お袋も含めて『生命(いのち)』に関わる仕事に就きたいと思ったんだ」
「一路がそう決めたことなら、私は応援するよ!
もちろん、受験も含めてね。この凪子姉さんが家庭教師を引き受けても良くってよ♪」


凪子は相手の心の動きを読むのに関して昔から長けている。
これから俺が一番に話したいことの核心がちょっとヘビーだと感じ取り
雰囲気を少しでも和らぐように努めて陽気に話していてくれていた。


「それと・・・・もう一つ、これは俺自身のことじゃないんだけど」
「ん・・・、話せる?」
「話せるよ・・・っていうか報告っていうことかな」
「報告?」
「うちの両親、復縁することになって・・・」
「復縁!?それってまた夫婦になるってことよね?もちろん一緒に住むんでしょ?
あぁ、私、何言ってるんだろう。当たり前じゃんね~でもそれって一路には複雑だね」
「うん、そうなんだ・・・正直、『何を今更!?』って感じなんだよ」
「一路、大丈夫?」
「・・・・・・実は・・・・全然、大丈夫じゃないっ!!
俺の・・・ガキん時の気持ちはお構いなしなんだよっ!!
でも両親には、お互い大嫌いになって別れた訳じゃないから
いずれこういう形になっても仕方がないのかな・・・と思う」

凪子にそう言った途端、胸のつかえが少し和らいだように思えた。
そして不覚にも目頭がじんわりと熱くなってしまった。

「我慢していたのね・・・私の前では自分に正直でいていいよ。
私は、最後まで一路の味方だから」
「ううっ・・・な・・ぎこ・・・・」

静かだがとめどなく溢れる涙を流れるままにし、
俺はその凪子の華奢な身体に包まれるように優しく抱かれた。
押し殺した自分の泣き声は樫の木の葉を鳴らす一陣の風にかき消された。

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ここは両親がよく小さな俺を散歩に連れてきてくれたところ。
当時母親が連日の研究で家に帰って来れない親父の顔を忘れないように
昼食用のお弁当を持ってこの樫の木で親子3人穏やかに過ごしたものだった。

それも長く続くこともなく・・・親父の留学を機に両親は離婚してしまった。
自分の心が傷付くということを幼心にも認識した。

しかしそれは今自分の隣で穏やかな笑顔でいてくれている凪子により、
また彼女の家族により癒されていったと言っても過言ではない。
だから今更だがここに来ることもできたし、
古傷を彼女にさらけ出せることもできた。
そして・・・そこからもう1歩前に進むこともできると確信した。


「凪子は、文化祭に戻らなくちゃダメだよね?」
「ううん、いいよ、サークルの模擬店の当番は終わっているし・・・
特に見て回りたいところも無いから」
「そっか・・・」
「それより一路はどこか見たいところあるの?
案内するよ、私の学部のある方へ行ってみる?」
「いや・・・いいよ。俺さ・・・ちょっと・・・」


俺は凪子に言いよどんだ。
その態度に彼女は眉をひそめながらも、
繋いでいる手に反対側の手を重ね話すことを無言で促してくれた。

「俺、凪子に話があるんだ」
「うん、そうなのね・・・でも、それって私にとって嫌なことじゃないよね?」

凪子はちょっとおどけて、でも少し不安げに俺の顔を覗き込んだ。

「いや、多分・・・そうじゃないと思う」
「じゃぁ、話して・・・そうじゃないと信じているから」

そう言いながら両手で俺の手をギュッと握り締め
俺の肩に自分の頭をともたげさせた。
手のひらから伝わる彼女の心のぬくもりに包まれて
肩口から匂い立つ彼女の香りに酔いそうになりながら俺は静かに話し始めた。

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「一路!痛いってばっ!」

私が掴まれた手を振りほどこうと腕に力を入れようとしたが、
反対に彼に腕をぐいと引っ張られて
気が付けば一路の胸の中に抱きこまれる形となっていた。
彼の動悸が「ドクドク」しているのが自身の身体で感じた。

「一路・・・?」
「・・・・・・」
「黙っていないでよ、どうしたの?」
「・・・・だ、誰だよ・・・?」
「えっ?誰って・・・?」
「サークルの部長と・・・その・・・」
「そんなの・・・フツーに接しているだけよ?」
「でもさ・・・」
「私には一路だけなのに・・・信じていないの?」
「そんなことないけどっ!」

長身の彼と視線を合わせるために私が頭を仰け反るように見上げているのに
一路は視線を逸らそうとした。
いまだ彼に掴まれている腕を今度こそ振りほどき、
彼の首の後ろに両手を回し自分のほうに彼の顔を近づけさせた。
唇が触れるか触れないかのところで「あなただけしか見えない」と囁き、
そのまま唇を寄せた。
静かに瞼を閉じ、お互いの吐息が漏れても尚もそれを続けた。



暫くして樫の木の傍の猫足のおしゃれなベンチに移動した。
お互いの手を繋いだまま・・・。

「一路、ここを知っているの?なんか詳しいような・・・?」
「そうか?俺、ここ好きなんだよね、ここから見る特に研究棟がなんか好きなんだ」
「やっぱり、ここを知っているんだ」
「まぁね、小さいときから来ているから・・・かな」
「小さいときから?」
「うん、お袋と親父が離婚する前はよくここに来ていたから」
「そうなんだ・・・」
「親父、ここの医学部卒で俺がガキの頃はまだ大学院にいたんじゃないかな
あの人たちは、確か学生結婚だったらしいから・・・。
その頃には、お袋はもう看護師として働いていたし」
「そう・・・それで・・・」

一路が引越ししてくる前のことはあまり聞いていなかったから
こんな話を彼から聞くのは初めてに近かった。
両親の離婚によって少なからず幼い彼の心は傷ついたと思う。
その昔の古傷の部分を敢えて自分にさらけ出してくれる彼に尚いっそう
愛しさがこみ上げてくるのだった。


presented by 地球の名言

紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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