2010 / 07
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息が出来なくなった。
ううん、実際には呼吸はしていたと思う。
でも、彼が、いきなり核心を突いてきたから。

「映は・・・俺の子だろう?」

あの子がお腹に宿ったときからずっと心の中に錘となって沈んでいたこと。
決して嫌悪することではなくて、むしろ自分にも幸せを手に入れることが
出来るんだ、決して手離すことの出来ない大切な大切な宝物。
その宝物をいつかもっと光に当たるところに上げなくてはいけないと思っていた。
その心の中の錘を解き放つ時が来たのかも・・・。

「どうして・・・そ、そう・・・思うの?」
「保育園の前で抱き上げたろう?
あの時、俺の子だってわかった」
「どうして・・・?なぜ、確信できるの?」
「出来るさ、俺と同じところに『痣』があるからな」
「そんなの・・・偶然・・・かもよ・・・」
「偶然じゃないよ・・・俺にも、兄貴にも親父にもあるんだ
左耳の後ろにあるだろう?」

私は、不安と焦りと・・・
何より彼に対する愛情が溢れ出てくるのを止められず
身体が小刻みに震えてきた。
息子に対する懺悔の気持ち、彼に対する今でも・・・
きっと当時以上に愛しいと思う気持ちがごちゃ混ぜとなって
それは涙という形となって溢れ出てきた。

「決して責めていないんだ、ただ・・・事実が知りたいんだ」
「うん・・・うん・・・」
「話してくれるか?」
「うん・・・」

涙を何度も彼は指で拭ってくれた。
その優しいしぐさは、あの頃と変わらない。
自分の肩に私の頭をもたげさせて、
大きな手で肩をすっぽりと抱き寄せた。
そして未だ溢れ出る涙を指先と・・・唇で何度も拭ってくれた。
こめかみに唇を寄せて何度も何度も私の名を口にして。
徐々に心の底に沈んでいた錘が彼によって解放されていく。

「あの頃ね・・・本当に幸せだったわ。
あなたと付き合っていて自分も幸せになっていいんだと実感していたから。
でもね反面、あなたがだんだん売れてきて時折遠くに感じたりしてね。
私なんかが傍にいていいのか・・・って思ったりして」
「忙しくなってきた頃・・・だよな・・・」
「うん、そう・・・アジアにも進出するって話も出ていた頃」
「あの頃か・・・・」



――――――あの頃・・・・。
私は彼に出逢って愛される幸せ、愛する喜びを知った。
毎日が楽しくて、充実感に満たされていた。
元々身体がナイーブな体質なのか、あまり気にしていなかったが
貧血と食欲不振、それと極度の寝不足のような倦怠感に襲われていた。
益々忙しくなってきた彼には打ち明けることも出来ず、
私は職場で貧血で倒れた。

ただの貧血だと思っていた。
念のため医師の診断を仰ぐと思いもよらぬ診断がくだされた。

「おめでとうございます。妊娠されています・・・6週目の中ごろですね。」

頭を鈍器で殴られたような衝撃があった。
考えられることだったが、
それでも乏しい知識の中で用心しているつもりだった。
今、売れ始めている彼に決して負担を掛けてはいけないと思っていたから。
私という存在ですら受け入れてもらえないはずなのに・・・。

実家の両親に報告をした。
そして・・・頬を思いっきり叩かれた。

父は何も言わず。
母は『恥知らず』と言った。
誰にも頼れないと自覚したが、たまたま実家からの帰りに翔に会った。
不安でどうしようもなくて全てを打ち明けた。
そして彼は何も言わず、自宅へ私を連れて帰ってくれた。

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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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