2010 / 08
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里津さんはお腹の赤ちゃんのパパに打ち明けるべきだと進言してくれた。
でも当時の私にはそんな勇気はなかった。
彼を通して親しくなったサブマネージャーにだけは打ち明けた。
同じ女性だったのできっとわかってくれる・・・と思ったから。
しかし、それは私の思い上がりだったのかもしれない。
彼女は、少し重みのある白い封筒を私に渡した。
掻爬(そうは)するよう促した。
彼女はマオさんが帰国する前に済ませて欲しいと言った。
このことは彼のご両親からのことづけでもあると言った。

私は・・・
もう彼の傍にいられない、いや、いてはいけないんだと自覚した。
彼が帰国する前に一人暮らしの部屋を引き払った。
そして里津さんを頼った。
翔の家族は詳しいことは聞かず、
ありのままの私を保護し受け入れてくれた。
まるで本当の家族のように。

私は・・・
何にも代えがたい彼を、愛を手放した代わりに、
最も貴重な幸せを手に入れた。
この子だけは決して手放さない。
彼を愛した証を一生守り抜くために。


ぽつぽつと話す私に何も言わず、
マオさんただ黙って聞いていてくれた。
時折、ギュッと抱き締めてくれていた。
涙ぐんでしまっている私の目元に優しい口付けした。
「映を生んでくれて、今まで健やかに育ててくれてありがとう」
「ううん、それは・・・私が守りたかったから」
「あのときの封筒は受け取ったのか?」
「ううん、その場で返したわ。絶対に守りたかったから」
「定かじゃないが、当時のサブマネージャーの独断だと思う
俺の両親は・・・多分、映の存在を知らないと思うから」
「うん・・・マオさんのご両親だもん、そんな非常なことは
なさらないよね?」
「多分な・・・・」

そして彼はコルクボードの写真をもう一度見上げて
優しく微笑み私の唇に熱い口付けを何度も落としていった。

陽がとっぷりと暮れるまで話した。
そして彼は改めて映に会うことを確約させて
やわらかい笑みを残して帰っていった。


少し額が汗ばんでいる我が子の髪を梳きながら
今日一日が目まぐるしく過ぎていったことを思い返していた。
あのような形で再会するとは思わなかった。
いつか・・・
この子が成長して自分のことを、そして父親のことを受け入れてくれる
時期が来たら打ち明けるつもりだった。
でもそれは私の母親として自分勝手な考えであって、
きっとこの子はそれを望んでいないと・・・
どこかで感じていた。
それが心の錘となっていた。

しかしそれが今解き放たれて私自身どこかホッとしてた。
今、この時期に彼と再会できたのが良かったのかもしれないと、
改めて我が子の寝顔を飽くことなくいつまでも見つめていた。

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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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