2017 / 10
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心地好くオルゴール調のBGMが静かに流れている。
天井から吊るされたガラスのモビールが空調の風に揺れてキラキラして、
奥まった位置にいる私達のテーブルまで光を届けてくれる。
私達以外のお客さんは波待ちのサーファー2人とご近所の主婦らしき2~3人。
注文の品が来るまで藤堂さんは店内を眺め、
とても良い雰囲気のお店だと満足そうに微笑んだ。
私にとって家族、知り合い以外・・・
あまり知らない人と食事をするのは慣れていないので
初めはドキドキしていたが、彼の笑顔を見ているだけで何故か懐かしい気持ちに包まれた。

「あの岬へは何しに行ったの?」
「特に用事というわけではなくて・・・・
本当は今日、カルチャーセンターでの仕事があったのですが、
テナントビルの都合でお休みになってしまって・・・」
「そうだったのか・・・」
「藤堂さんは?こちらの方に住んでいるのですか?それとも・・・お仕事か何か?」
「小山牧師から聞いたと思うけれど、子どもの頃はこの辺りに住んでいた。
でも父の仕事の都合で海外へ移住してしまったんだ」
「そうだったんですか・・・・それで啓お父さんが、昔礼拝にいらしていたと言っていたのですね」
「そのことは・・・・覚えている?」
「いいえ・・・・でも先日お会いした時、初めてお会いした気がしなかったので・・・・
きっと子どもの頃にどこかでお目にかかっているのですね」
「・・・・そうだね」
そう言った藤堂さんはどこか残念そうな面持ちとなった。

藤堂さんは、ここを住まいと仕事の拠点として私の個展開催2ヶ月ほど前に引っ越してきたという。
指揮者であるお父様は、お母様とご一緒に未だ外国に住んでいらっしゃるそうだ。
彼は作曲と音楽プロデューサーの仕事をこの地で始めたという。
元々、クリスチャンだったのでこれからは出来る限り山の里教会の礼拝に出席すると話していた。
彼との語らいは時間を忘れてしまうほどだった。
気が付けばお日様は中天を過ぎ、やわらかな陽射しとなっていた。

「私、そろそろ帰ります」
「そう?じゃぁ、僕も・・・・」
「とても楽しかったです、ありがとうございました」
「引き止めた感じですまなかったね。また今度・・・作品を見せてくれるかな?」
「ハイ、是非!良かったら今度工房にもいらして下さい」
「うん、ありがとう」

喫茶店を出た後、ほんの数センチの段差に足を引っ掛けてしまった私はゆらりとよろめいてしまった。
すぐ後ろにいた藤堂さんが肩を抱くように支えてくれた。
「大丈夫?真凛・・・?」
本当に囁くような声だったのでよく聞き取れなかったが
私の中で何かが弾けたような感覚に陥った。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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