2017 / 05
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「さて、おなかもいっぱいになったしそろそろMDを渡さなくちゃいけないないね」
「でも・・・食器の片づけをしなければ・・・」
「いや、いいよ、仕度の手伝いをしてくれたから、片付けは僕がやるよ」
「そうでうすか?」
「うん、それにね、片付けの方が簡単なんだ。食洗機に放り込んでスイッチオン!だけだからね」
「あ~~ぞうですね・・・それで私に仕度を手伝わせたんですか?」
「そう!その通り!!」
「なるほど、藤堂さんはそういうやり方なんですね。覚えておきます、うふふふ・・・」
「あっ!何か企んでるな?」
「いいえ♪」

食事をしながら更に気さくに話が出来る仲になったようで、
こうしてふざけてでも話せるようになったことに2人とも嬉しくなった。

「階段を上がって右側に『Office』と書いてあるドアの向こう側が僕の仕事場なんだ。
すぐにここを片付けてしまうから先に行っててくれ」
「ハイ、わかりました、右側ですね?」
「うん、まぁ、間違って他のドアを開けてしまっても寝室と・・・客間くらいだから」
「・・・・・開けませんよ~~~」
「わかっているよ・・・ソファにでも掛けて待っていてくれ」

謙杜に言われたとおり階段を上がり『Office』と書いてあるドアをそっと開けた。
先ほど車の中で彼から香った香りがふわっと真凛の鼻孔をくすぐった。
天井の灯りは点いていなかった。
かなり薄暗いフットライトと外からの街灯と廊下からの灯りで仄かな明るさだ。
部屋の中のはもう一つドアがあり、その向こう側は音楽プロデューサーとしての仕事場であろうか。
真凛のいる部屋は8畳ほどの広さで、大きな窓の反対側には作り付けの書棚があった。
資料や雑誌、書籍、CDやDVDが所狭しと保管されている。
真凛は細い指先でそれらをなぞるように薄暗い部屋の中でなぞりながら眺めた。
真凛の目の高さにあった棚に置いてある写真立てがふと目に留まった。
「これ・・・私・・・!?」
そう呟き、思わずその写真立てを手に取った。
その時、どこからか風が吹いたのか真凛のいる部屋のドアが閉まった。
途端に仄かに明るさを保っていた部屋は暗闇に近い状態となってしまった。


階下では謙杜が食器を片付けてリビングに面している大きな窓を開けて
デッキに置いてある植木を部屋にしまう作業をしていた。
階下にいた謙杜は、微かな泣き声を聞いた。
それは胸が締め付けられるような声を殺したような泣き声。
「真凛?」
そう口にしたが早いかリビングを飛び出し、階段を駆け上がり真凛のいる部屋に飛び込んだ。
床にうずくまっている彼女を抱き起こし自分の胸元に抱き寄せた。
「真凛・・・?どうしたの?」
「やだ・・・暗い・・・怖い・・・・怖いよぉ
のりちゃん、ごめんなさい・・・・意地悪しないで・・・真凛をココから出してよぉ
置いていかないで・・・お兄ちゃん・・・真凛の傍にいて・・・いい子にするから・・・
うっ・・・ごめんなさい・・・いい子にするから・・・お願い・・・・」
真凛は、暗闇の中で写真立てを抱き締めながら子どものように泣き出していた。

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・真凛、いい子にするからココは怖いから・・・・
置いていかないで、お兄ちゃん、真凛をまた一人ぼっちにしないで・・・・いい子にするから」
「真凛・・・・」
「おに・・・い・・・ちゃん・・・、真凛・・・いい子に・・・」
「誰も真凛をもう置いていかないから・・・真凛、泣かないで、もう一人させないから
僕が傍にずっといるから、だからもう泣かないで」
「・・・・お兄ちゃ・・・ん?」
「・・・・そうだよ、僕だよ、真凛、僕の真凛・・・」

真凛は謙杜の優しい声を聴き、涙に濡れた顔を上げた。
彼の優しいはしばみ色の瞳を見て「あっ!」と小さい声を出した。
謙杜は彼女の涙を優しく拭い、両頬を挟み額にキスをした。
そして宝物を大切に抱き寄せるように優しく真凛を抱き締め
深く溜息を吐き彼女の髪にも数回キスをした。
抱き上げるように近くのソファに座り直し、リモコンで照明を点け、彼女を安心させた。

「真凛、大丈夫か?」
「ハイ、大丈夫です・・・ごめんなさい、動揺してしまって
暗所恐怖症で・・・小さいときに・・・納屋に閉じ込められたことがあって
それから暗闇がダメでそれでも夜空に瞬く星は怖くないんです」
「あぁ・・・知っている。三崎夫妻に引き取られる一件時だろう?
経緯は父や小山牧師から聞いているよ」
「そう・・・だったんですか。パニックを起こしてあまりにも酷くて
三崎夫妻が不安に思ったのも無理もないですね。」
「本来、真凛が引き取られるはずだったのに・・・代わりにあの子が・・・」
「紀ちゃんですね?でも私はそれでも良いと思っています。
でも、その後お兄ちゃんとの別れは辛かったですが・・・」
「ごめん・・・あの頃は僕も子ども過ぎたから」
「謝らないで・・・仕方がなかったんです」
「それでも、僕は離れたくなかった。傍にいたかった・・・
でももう決して一人にさせない!ずっと僕が傍にいる。
愛しているよ、真凛、僕の大切な・・・女性(ひと)」
「藤堂さん?」
「クスッ・・・真凛、『謙杜』だよ」

謙杜はそう囁き、真凛のまた潤み始めた瞳にそっと唇を寄せた。
自分の肩に彼女を凭れさせ髪に指を絡ませて優しく何度も梳いた。
「真凛、愛している」と何度も囁きながら髪に、額に、瞼に、頬に・・・・
順に全てを愛でるようにキスした。
「お兄ちゃん、ううん、謙杜さん・・・私が思い出すまで待っていてくれたのね?
私も・・・多分あの頃から、好きだったんだと思う。ううん、きっと愛していた・・・」
「真凛!」
2人、そっと唇を寄せ合い啄ばむようなキスをした。
彼女への愛情が溢れ出すかのように堰を切って彼は強く抱き締めながらもっと深く何度も口付けて
お互いもう傍を離れないと誓い合った。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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