2017 / 09
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学校の宿題をするために辞書を取ろうと学生かばんの中を探った。
「チッ!」と舌打ちして学校に置いてきてしまったことを思い出し
仕方なく隣室の姉に借りに行くことにした。
姉弟とはいえプライバシーもあり、その上年頃の女性の部屋に入るため・・・
それ以上に自分の姉だというだけで何かとちょっかいを出してくる
最も身近で良い相談相手であり、それでいて自分にとって苦手な存在。
自室を出て姉の部屋の扉の前に立ち深呼吸を一つ、軽くノックをする。
・・・・小さい声で返事あり、確認してから静かに扉を開ける。


「ごめん、姉貴」
「何、どうしたの?」
「英語の辞書、学校に忘れてきたから貸して欲しいんだ」
「英和の方?コレで良い?」
「あぁ、助かったよ。明日までに宿題が膨大な量でさ・・・」
「あの英語の教師、まだ雄輝の学校にいたのよね?
でもまぁ、あの先生は厳しいけれど特に受験の時には『やっておいて良かった!』と思うから」
「まぁね、英語は好きだし・・・特に問題はないんだけどさ。
それに辞書も親父の借りても良いけれど細かすぎるんだよね、あの人の辞書は・・・」
「そうそう!昔のだし、結構アンダーラインが引っ張っていて読みにくいわよ?」
「へぇ~もう使った事あるのか?」
「ええ、何度もよ!それにしても英語もそれなりの成績をとっているのに
膨大な宿題ってどういうこと?」
「いや・・・まぁ、あの・・・うぅん・・・ちょっとさ・・・」
飾り棚に置いてある小さなぬいぐるみを神経質に触り2個ほど下に落としてしまった。

「なにシドロモドロになってんのよ。はは~~~ん、お姉さんわかっちゃったかも♪
ヒロちゃんに関してでしょ?」
「ち、違うよ!!」
「あ~や~し~い~な~??」
「俺の宿題の他に今度のテストの参考にって、参考資料を作っているだけだよ
同じ高校に行きたいから・・・・だよ」
「あ~~~なんて純愛なのかしら~~~
お姉さん、ヒロちゃんが義妹になるんなる諸手を挙げて大歓迎よ!!」
「なんだよ・・・大歓迎って」
「だって、そうでしょう?アンタの周りに纏わり付いてくる女子ってヴジュアルはまぁまぁでも
中身がね~~~伴っていないというか、皆無に等しいというか・・・」
「周りの女子は関係ないからっ!!」
「ハイハイ!いーわよー♪お姉さんは見守っていてあげるから~~
どんどん愛を育んでいきなさいねvv」
「おいっ!どういう意味だよ!?」
「あははは~~おかしい!!
雄輝は特にヒロちゃんのこととなると昔っからムキになっちゃって可愛い~~!!」
「・・・・ったく、辞書借りるから」


そう、言い放つと俺は姉貴の部屋を勢いよく飛び出し自室に入り、
思いっきり自分の部屋の扉を閉めた。
机の上に借りてきた英和辞書を放り投げ、自分はベッドの上に乱暴に寝転んだ。
未だ隣室からはきゃらきゃらと楽しそうな笑い声が聞こえていた。
「そうだよ、悪いかよ!北山のことでムキになって・・・」
俺は独り言を呟き、彼女の事を想うだけで身体の中から疼くものを押し殺すように
自身の身体を丸めるようにした。

寝転びながらふと姉貴の部屋の香りを思い出した。
女子高校生の部屋だけに俺の部屋の雰囲気とは全く違い、
壁紙の色事態違う。
以前、家をリフォームする際に姉のたっての希望でアメリカのインテリアブランドのものらしく
色は穏やかな薄い色であるが細かい花柄である。
俺の部屋壁紙は特になく珪藻土の上に漆喰を塗った形になっている。
コレに関してはお袋が「年頃の男の子は臭うから・・・」という失礼な?理由でこうなった。
姉貴の部屋には女性らしい小物やたんすやドレッサー等がある。
入った瞬間、所謂『イイ香り』もする。
その香りの根源は何なのか・・・?
それは不思議と俺をリラックスさせる効力がある。

小学生低学年まではこれでも結構家族の中でお喋りをしていたが、
高学年になるにつれて特に両親の前では無口となっていった。
よくお袋が嘆いている「用の口もきかない」って。
そりゃ、思春期真っ只中の男子が母親の前で一日の出来事を逐一報告するのもどうかと・・・。
でも姉貴の前だと・・・というかあの部屋だと何故かリラックスできて
不思議と自分の心の内を素直に話すことが出来る。

友達関係のこと、勉強のこと、部活のこと・・・そして告白前の北山に対する想い
その後のことも・・・全て姉貴は俺をさっきのようにからかいながらも
でも真剣に聞いていてくれた。
暫くそんなことを考えていたが、宿題を思い出し改めて机に向かった。
小一時間机に向かっているとベッドサイドテーブルの上の携帯電話が鳴った。
着信を確認して俺は口元を綻ばせた。

「もしもし、ユウキ?あたし・・・」
「あぁ、北山?部活終わったのか?」
「うん、もうじき定期演奏会だからね、練習きつくってさ~帰ってから勉強するの眠くって大変だよ」
「そっか・・・大変だな。あぁ、でも英語はいつもどおり【まとめ】作っといてやるからな!」
「えっ!?本当?わ~~助かる~~♪ユウキのそれのお陰で英語の成績が上がったんだよね
それに文法の授業がわかりやすいっていうか・・・いつもありがとう」
「まぁ、同じ高校に行きたいからこれくらいの点数は取っておかないと内申書に影響があるからね」
「また~~~そんなことを・・・あたしは愛ちゃんと同じ女子校に行くの!!」
「ダメだ!俺と同じ高校に行くんだ!!」
「イヤだって言っているのに~~ユウキは我が儘だよ?」
「ここは絶対に譲れないからなっ!それに南はもしかしたら東野先輩の高校に行くかもしれないぞ?」
「えっ!?そうなの・・?」
「南なら可能性はあると思うけれど。東野先輩に夢中だしな~~」
「そうだよね・・・その可能性もあるよね・・・その上、こないだ音大も行きたいようなこと言っていたし
あたしだけ『愛ちゃんと一緒に』と思っているだけかも」
電話の向こうでしょんぼりしているであろう広子のことを想った途端
雄輝の胸がチクリと鈍い痛みが走った。

その場の雰囲気を打ち消すように努めて明るい声で話した。
「それで明日、空けているぞ?」
「あぁ・・・うん・・・本当?じゃぁ、映画観に行けそうだね」
「うん、じゃぁ、後でネットで座席を取っておくよ」
「そんなこと出来るんだ~じゃぁ、お願いします」
「前から観たいって言っていた作品で良いんだな?時間は・・・10時半に北山の家に行くよ」
「ううん、いいよ。ウチに来ると戻る感じになるからその時間にあたしがユウキの家に行くから
それでイイでしょう?家を出るときメールするから」
「わかった・・・玄関で待っているよ。
それと・・・さっき高校のこと、ごめん、でも本当に俺は北山とっ!!」
「うん、わかっている。ユウキはそこまで考えてくれているってわかっているから
でも志望校決定までまだ時間があるよね?
あたしも自分のことだから真剣に考えているよ将来のことも含めてね」
「将来・・・?」
「うん、将来のこと、ユウキだってそうでしょう?」
「まぁな・・・じゃぁ、明日」
「うん!また明日ね~~バイバイ♪」
二つ折れの携帯を「パタン」と閉じ雄輝は最後に広子が話した『将来』という言葉を頭の中で反芻しながら呟いた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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