2017 / 05
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Page.170

翌日の日曜日は気温が低かったが風も吹いていなかったので陽射しは暖かかった。
小学生の遠足ヨロシクかなり早い時間に起床してしまった。
シャワーを浴び、朝食を軽く摂った。
両親には前日、北山と出掛ける旨を伝えていたので特に何も言わなかった。
昨夜姉貴から借りた辞書を返すために姉の部屋に入ってみれば姉も既に起きていて
今朝から友人と出掛けると言う。

「姉貴、辞書サンキュ!」
「どういたしまして、あらっ?雄輝も出掛けるの?」
「あぁ、10時半に北山が来る」
「へぇ~~~おうちデート?両親在宅なのに勇気ある行動ねvv」
「違うよっ!!映画観に行くだけだよっ!!」
「またまたムキになってぇぇ~~ところで映画『だけ』かしら!?」
「・・・・おいっ!他に何かあるのかよ?」
「『他に』の方にウェイトが掛かっていたりして・・・あれ~雄輝クン、目がすわっているよ~~
お姉さん、都合の悪いこと言ったかな?」
「いいえ、特に言っていません」
「そうでしょう?私は姉として雄輝の味方だからね。ヒロちゃんのこと大切に想いなさいよ
自分の気持ちも大事だけれど、アンタは男なんだからちゃんと抑えなくちゃいけないわよ」
「わかっているよ・・・いつも姉貴サンキュ!」
「カワイイ弟とヒロちゃんのためよ!まぁ、大部分がカワイイカワイイ義妹になる予定のヒロちゃんを
いつでも狼に豹変しかねない弟から守るためよ!」
「おいっ!!姉貴っ!!」

笑いながら姉貴はストールを首に巻いてバッグを持って
俺に手をヒラヒラさせて部屋から出て行った。
やはりこの部屋は不思議だ。
俺の心の内を素直に言葉にさせることが出来る。
姉貴の前だからか?それとも・・・・?


階下で玄関の扉が閉まる音が響いた。
姉貴の部屋の音符を模った壁掛け時計を見て
俺もそろそろ出掛ける準備をしなければ思い自室に戻った。
ブラックジーンズ、長袖カットソー、パーカーに着替え、
クローゼットの中からボアジャケットとアフガンストールを取り出した。
シザーバッグに財布と携帯電話を入れてから
本棚に置いてある鏡を覗きヘアワックスを取り手櫛で髪の毛にささっと馴染ませた。
もう一度鏡の中の自分を確認して、机の上の時計で時間確認をしたことろで家の呼び鈴が鳴った。
昨夜、北山のためにまとめた数枚の紙を徐に掴み階段を駆け下り、
リビングにいるであろう両親に出掛ける旨だけを伝え玄関の扉を勢いよく開けた。


観たかった映画は特殊眼鏡を着用し臨場感溢れるアドベンチャーの映画だった。
映画館の椅子はゆったりと座れたが、映画が始まり次回予告など流れる頃辺りが徐々に暗くなって
北山が日頃の疲れなのか・・・?
「本編始まるまでユウキに寄り掛かってもいい?始まったら教えてね」と言ってきた。
そう言うと俺の左の上腕に頭をくっ付けるように目を閉じた。
そして・・・ふわっといい香りがした。そう、俺がリラックスできるあの香りが・・・・。
自分達の周囲に観客がいないことを好いことに俺は北山の肩に腕を回し
眠っている彼女の目元に額に唇を寄せた。
髪にもキスをして彼女の香りを満喫した。
脳裏に姉貴の言葉の『狼に豹変する』という言葉駆け巡ったが・・・。

本編が始まって北山は起きた。
「あたしが寝ている間にヘンなことしていない?」と疑いの目で見ていたが
その辺りは含み笑いをしてスルーした。
話の進行でときたま「ドキッ!」とする場面で北山が無意識の行動なのか
俺の腕に縋ってくるのを嬉しく感じた。
その度にあの香りが鼻孔をくすぐったが自分なりに?どうにか闘った。

映画が終わり、映画館が入っているショッピングモールを2人で歩いている時
ふと香りに誘われてあるショップに足を踏み入れた。

「ユウキ、こんなお店に興味あるの?」
「いや・・・特にはないけれど、この香り・・・」
「あぁ、これね・・・ユウキこの香り好きなの?」
「うん・・・まぁね、好きかな」
「そうなんだ、これあたしも使っているボディバターの香りなんだよ」
「ボディバター?」
「そう、ボディバター、全身に使える保湿クリームみたいなもので
ユウキのお姉さん、華絵先輩に薦められてこの冬から使い始めたんだ、良い匂いでしょう?」
「あぁ・・・そうなんだ」
「『香り』って大事だよね。アロマセラピーというのもあるくらいだし
それによってリラックスも出来るし、イライラも解消できるし、時には集中もできるしね」
「でもなんで・・・姉貴にそれ薦められたの?」
「たまたまね、こないだ駅近くで華絵先輩に会って凄く良い香りがするから聞いてみたの
長年使っているボディバターだって。自分の部屋はこの香りが染み付いてしまって
弟が自分の部屋に来るとリラックスして色々な相談や話をしてくれるって・・・」
「そうか・・・」
「それでね、きっと弟はこの香りが好きなんだわ!って。それにあたし自身この時期になると
お肌がカサカサしてきちゃうことも相談して・・・それで薦められたってわけ」
「カサカサと俺が好きな香りの関係は?」
「華絵先輩曰く『ユウキはあれでも両親からのプレッシャーとか性格的なこともあって
気難しいところがあるからね』って。
まぁ、同じにボディバター使うならあたしもユウキも好きな香りが良いっていう結論よ!」

姉貴と北山の心配りに何故か嬉しくなってしまい人目も憚らずに彼女を店内で抱き寄せた。
盛大な奇声と共に彼女は力技で離れようとしたが、手放す一歩前でこめかみにそっとキスをした。
顔を真っ赤にさせてショートブーツの低めのヒールを「カツカツ」と派手に音を立てて
店内から出て行ってしまった。
モール内の休憩所の椅子にちょこんと座る北山は未だ真っ赤な顔して怒っている風。
さすがの自分も見境がなかったなと暫し反省して隣の椅子に座る。

「なぁ、怒るなよ・・・」
「・・・もうっ!ユウキ!恥ずかしいでしょっ、お店でやんないでよっ!」
「お店じゃなかったらいいの?」
「そういうことじゃないでしょっ!!」
「・・・ごめん、あの香り確かに好きだし、姉貴の言うとおりリラックスできる香りなんだ
だから・・・思わずさぁ・・・・」
「だからって!!ダメでしょっ!!もうこんなことするユウキなんかキライだからねっ!」
「ホントにごめん・・・もうしないよ」
「本当に?」

俯いてしまっている俺の顔を下から覗き込むように近づいてきた。
あぁ・・・そういうことをすることによって香りが俺を悩ませるんだよ~~
俺は豹変する前にスッと立ち上がり、彼女の手を強く握り一緒に立ち上がらせた。
それと同時に彼女が勢い余ってよろめいた。

「今度はどこへ行く?」と明るい声で言い、彼女の香りが放つ身体を強く抱きとめた。
花の蕾が綻ぶように彼女が笑い「次はあっちのお店ね」という言葉に頷き
彼女の香りに大いに満足すると共に姉貴にも感謝した。




                -おわり-
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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