2017 / 06
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「お疲れ様です!来週もよろしくお願いします!!」
「おうっ!シュウ!さっきの件、真剣に考えておいてくれよ?
いいな、イイ返事を待っているよ」
「ハイ、ありがとうございます、じゃぁ、失礼します」

タクシーから恰幅の良い男性と助手席に座る若い男性が手を振り、
立ち去るタクシーを見送る2人の男性が街灯下に立っていた。
「やれやれ、シュウ、遅くまでご苦労だったな」
「いえ、大丈夫ですよ。これも仕事のうちですからね」
「まぁな・・・ある種サービス業の俺らだからな」
「そうですよ、でもなんで俺なんですか?」
「まぁ、他の奴らでも良いんだがあちらがお前が良いって言ってるんだよ」
「そうですか、嬉しいことですね」
「そうだな・・・それに、まぁ、お前の活動範囲も広がって良いんじゃないか?」
「ええ、まぁ・・・」
「まぁ、お前自身の考えも大事だから、会社のことは気にするな、いいな?」
「ハイ、ありがとうございます、でもやっぱり色々考えてしまいますよ」
「ゆっくり考えろ、じゃぁ、今週末はオフだからよく休めよ」
「ハイ、お疲れ様でした、失礼します」

2人は笑顔で別れ、1人は携帯電話を片手に立ち去り、
もう1人はタクシーを降りたところから最寄の駅へ戻るように大通りを歩き始めた。
携帯電話は数回コールし、目当ての人からの応答はなく・・・
「当たり前だよな、こんな時間に起きている筈ないか・・・」と呟いた。
ジャケットの内ポケットから薄い色の付いたサングラスを出した。
流しのタクシーを拾おうかと周りを見たが
週末のこの時間では掴まえる間に自宅に着きそうだったので
首に巻いているアフガンストールを更にきつく巻き、
吐く息を白くさせながら足早に自宅の方向へ歩き始めた。
冷たい空気が喉に沁みる・・・ジャケットのポケットからマスクを出し身に付けた。


もう日付が変わっている時間帯では住宅地の歩道には歩いて帰る人もいなく
自分の横を数台のタクシーや乗用車がスピードを上げて走り去っていく。
帰宅途中の道すがらコンビニに寄り、ホットの缶コーヒーとフルーツゼリーを2個買った。
店を出てすぐ缶コーヒーを開け、冷えた身体に染渡るようにゆっくり飲み始めた。
歩きながら飲んでも良いのだがこれをやって、
いつだったか失敗してしまい服を汚したことがあったことを思い出した。
一緒に連れ立っていた人が「子どもみたい」と笑っていたっけ。
店前でコーヒーを飲み干した。
ごみ箱に大きな音をたてて缶を捨てまた自宅に向けて歩き始めた。
自宅までの道のりは一戸建てやマンションが何棟も立ち並び、
新興住宅地なので創立されて間が無しの幼稚園や小学校も建っている。
1年前ほど前にこの土地へ引っ越してきて環境の良いところだと一目見て気に入った。

暫く歩いていくうちに自宅マンションが見えてきた。
自宅のある階を見上げ仄かに灯りが点いているのを確認して
マンションのエントランスに入った。
オートロックを鍵で開けエレベーターに乗り、自宅に向かった。
門扉を開けふと横に置いてあるはずの植木を探した。
日中風が強かったのでどこかに転がってしまったのか?と思った。

夜が明け太陽が昇ったらもう一度探そうと思い玄関扉を開けた。
内玄関のフットライトが点きシューズボックスの棚に
植木が置いてあるのを確認してホッとした面持ちになった。
赤い実をつけた植木を見ながら靴を脱ぎ静かに長い廊下を歩く。
微かに野菜を煮込んだ香りがする。
香りを辿りながらキッチンへ足を運び最近購入した
外国製の鍋に大好物のロールキャベツが入っているのを確認した。
リビングのテレビの脇に置いてあるフロアスタンドがやわらかい光を放っている。
いつも自分が帰ってくるとき真っ暗だと寂しくなってしまうから・・・
という理由でこれだけは点灯しておいてくれる心配りに自分も優しい気持ちになる。


リビングのシーリングライト点け、ストールとジャケットを脱ぎキッチンで手を洗った。
少しぬるくなってしまったロールキャベツのスープだけを
マグカップに注ぎラップをかけ電子レンジで温めた。
今夜は付き合い程度のアルコールを摂取していた。
一応食事もしていたがさすがにこの時間で
小腹が空いていた自分にはちょうど良かった。

こたつの上に持ち帰り残業だろうか・・・。
折り紙の束と数個のメダル型の完成品があった。
それを指先でいじりながら、これを作ったであろう人のことを思い出していた。
携帯電話の電源を切りおもむろに立ち上がり、
マグカップを片付けて入浴するために浴室へ向かった。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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