2017 / 05
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手土産にワインを持って修二との実家へは車で出掛けた。
幸乃の職場近くに実家がある。
あと2台くらいは駐車出来るであろう広い駐車場に車を止めた。
エンジンを切ったと同時に玄関横の小窓の灯りが点いた。
そして修二の父親が玄関扉を開けて2人をにこやかに向かい入れた。

「よく来たね、幸乃さんも久し振りだね」
「こんばんは、すっかりご無沙汰しています。夏休み以来ですね」
「いやいや、それは構わんよ!尤もかあさんはよく幸乃さんを見かけているようだぞ
元気に走り回っているようだね」
「あっ!そうなんですか?なんか・・・恥ずかしいな~~」
「そんなことないだろう、俺だって仕事している幸乃ちゃんは素敵だと思うよ」
「まぁ、こんなところで立ち話もなんだし、暖かい部屋へ行こう
皓一(こういち)家族も呼んだんだ」
「兄さん達も来ているのか?」

コートをハンガーに掛け、玄関脇のクローゼットにしまった。
廊下の突き当たりのガラス戸を開け、リビングダイニングに3人は入った。

「まぁ、修ちゃん、いらっしゃい、ここへは久し振りね、さぁ、皆揃ったから頂きましょうね」
「お袋、コレお土産のワイン・・・幸乃が選んだんだ」
「あら、ありがとう、でも、お父さんもこの頃はワインより日本酒の方がいいみたいよ」
「そんな言い方するなよ!」
「いいよ、修君、リサーチ不足だったから・・・・」
「でも、幸乃ちゃん、ごめんな」
「ううん、気にしてないから・・・」
「修二、久し振りだな!すっかり売れっ子だな」
「兄さんも義姉さんも久し振りだね。あれ?ちびっ子達は?」
「あいつらは、先に食事を済ませてそうとうはしゃぎ過ぎて今はあっちで夢の中だよ」
「じゃぁ、義姉さんもゆっくり食事が出来ますね」
「ええ、下は最近伝い歩きが出来るようになったから落ち着いて食事が出来ないのよ」
「さぁさぁ、沢山食べて頂戴ね、今日は結構、頑張ったのよ」
「「「「いただきます!!」」」」



食事は表向きは和やかにすすんでいった。
しかし修二と修二の父親以外幸乃に話し掛けることもなく・・・
その場の雰囲気に修二は徐々に苛立っていった。
食事が一通り終わり、子どもの様子を見てくるという理由で義姉が席を立った。
後片付けは幸乃と母親がすることにした。
男性達は、ソファでコーヒーを飲んでいる。


「幸乃さん、お茶やお花のお稽古はなさっているの?」
「仕事が忙しくて、全然出来ないんです」
「あら、そうなの?そんなことでは湊家の嫁は務まらないわよ
鞠子(まりこ)さんはちゃんと嫁入り前に出来ていたのにねぇ」
「すみません・・・」
「コレだから困るのよね。それなりのご家庭のお嬢さんを修二の嫁に来て貰おうと思っていたのに
勝手に籍を入れちゃって・・・それに親戚やお付き合いしている方々にお披露目もしないまま
修二の仕事仲間だけで結婚式と披露宴を済ませちゃうんだから」
「すみません・・・」
「あなたのお家じゃ、それなりに躾をしていたとは思えないんだけど・・・
そこのところどうなの?それに、あなた職業とはいえいつも大きな声出していて
全然、品がないように見えるのよ」
「すみません・・・」
「10日くらい前に幼稚園近くを通ったら大きな声で走り回っていたでしょう?
もううちの嫁だってご近所さまに知れたら、私、もう外を歩けないわ・・・
あそこの幼稚園を辞めてどこか違うところにいけないの?」
「すみません・・・」
「せめてどこかの大学の付属幼稚園だったら体裁も付くのに、まったく幸乃さんときたら・・・」
「すみま・・・・」
「幸乃っ!謝るな!!」

修二の大声に驚き、幸乃が振り返った。
彼女の目には悲しそうな色があり、目じりに涙が滲んでいた。
幸乃の手を取った修二は彼女の手が小刻みに震えているのがわかり
母親に鋭い目つきで睨み付けた。

「あら、修ちゃん、なぁに?」
「お袋っ!いつもいつもそんなことで幸乃を煩わせるなよ!
それに幸乃の勤めは公立幼稚園なんだから勝手に勤務先を変えることは出来ないよ!」
「修ちゃん、当たり前のことでしょう?湊家は大きく事業を展開しているのよ
外国の方も含めて色々な方々とお付き合いするのよ」
「俺達には関係ない!」
強く母親に言い放った修二は幸乃を連れてキッチンから出ようとした。

「そんなことないわ、いずれあなたも芸能界を辞めてお父さんの跡を継いで欲しいのよ
皓一と仲良くやっていって、それがお母さんの切なる希望よ」
「そのことは・・・再三話し合ってお互い合意していると思っている
今は親父だって俺のやっていることを見守っていてくれているじゃないか」
「それにこれから先、子どもが生まれるようなことがあっても
きちんと躾けられていない幸乃さんでは子育てできるかしら?
鞠子さんみたいにそれなりのお嬢様だったらねぇ、子ども達も『良い子』育つと思うのよ」
「お袋、幸乃の職業は知っているよね?幼稚園の先生だよ!?
きちんと大学で勉強してきているんだよ」
「大学出たからって・・・今更育った環境は変えられないじゃないの
幸乃さん、悪いことは言わないわ、今のうちに修ちゃんと離婚して頂戴ね
戸籍に傷が付いても子どもが出来たの生まれたのじゃ、あなた1人で育てられるの?
ご両親だってもうお仕事も・・・」

堪らなくなった修二は幸乃を背に庇い、母親を上から睨み付けるように怒鳴った。
「お袋っ!!!言って良い事と悪いことがあるだろうがっ!!」
「悪いことは言わないわ~幸乃さん、今のうちに離婚してちょうだいな。
子どもが出来てからじゃ、心身ともに傷つけられるのは火を見るより明らかよ」
「私・・・それだけは出来ません」
「まぁ、なんてこと言うのっ!あなたじゃ、湊家の嫁は務まらないって何度も言っているのに
本当にわからずやなのねっ!同じ嫁同士でも釣り合いが取れないに・・・」
「いい加減にしろよっ!!兄貴にには悪いけど言わせて貰うよ!」
「修君、いいよ・・・やめてよぉ」

自分の背中で涙ぐんでおろおろしている彼女を思ったらここで止めるべきなのだろう。
しかし、幸乃と出逢い、付き合い、結婚してからも母親からのいじめと言える言動は
いい加減うんざりしていたのでここで釘を刺すことにした。
父親の仕事を通しての地位や修二自身が世間から注目される立場を
自分と擦りかえている憐れな母親の気持ちに喝を入れるために
父親からもこの件に関して既にお許しは出ていたから。

「義姉さんがそんなに偉いのかよ!?先祖が元華族かなんか知らないけど
本人はどうなんだよ!?」
「黙りなさい!」
「言わせて貰うよ!兄貴の会社に秘書で入った途端兄貴と『出来ちゃった結婚』するようなヤツを
素晴らしく出来た嫁なのかよ?育児はベビーシッター任せ、家事もお手伝いさん任せ、
こういう時に片付けるときもさっさと逃げる術は心得ているんだもんな!」
「なんてこと言うの!?鞠子さんに謝りなさよっ!!」
「謝らねぇよっ!兄貴も義姉さんも幸乃を無視しやがって!!」

まさに修二の頭から湯気が出ているところに仲裁するように父親が割って入ってきた。
母親と修二をその場から離すように2人をリビングの方に導いた。
「もうその辺でいいだろう?修二も言いたいこと言えただろうし・・・・
幸乃さん、気を悪くさせたら私からお詫びするよ」
「いいえ、お義父さま・・・大丈夫です。修君がいますから・・・」
義父に向かって泣き笑いの様な笑顔を向けた幸乃だった。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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