2017 / 09
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Page.185

身体を温めるというより、多少の汗を流すつもりで
手早く入浴を済ませた修二はリビングにいる幸乃のところへ戻った。
ロング丈の部屋着の裾に膝を抱え込むようにしていつもの位置ではなく
彼の定位置の隣に座椅子を引っ張ってきたのだろうか・・・その上に座っている。
彼女の前に置かれているマグカップのココアは少しも減っていない。
それをもう一度小鍋に戻して温め直し、自分と彼女の分に分けて持って行った。

「幸乃ちゃん、飲んで・・・」
「うん、なんかね、考えごとしていたらぬるくなっちゃった」
「考え込むなよ、実家のことは気にするなって!」
「うん、大丈夫だから・・・あのね、修君に話があるの・・・」
「何?改まって・・・・」
「う・・・ん、あのねコレ見てくれる?」

そう言いながら自分の脇に置いてあるトートバッグの中から手帳に挟んでいるものを見せた。
感熱紙に印刷されているモノクロの写真の様な物を修二の前に差し出した。
長い指でそれをなぞりながら見入る修二の顔を伺いながらおもむろに幸乃は口を開いた。

「それね・・・修君と私の赤ちゃん」
「えっ!?あ、赤ちゃん!?」
「うん、赤ちゃん、ちっちゃいよね?今は・・・8週目に入ったところかな」
「それって・・・何ヶ月?」
「う~~ん、今は『週』で表すらしいけれど3ヶ月目に入ったところなのかな?」
「やった~~~」
「あの・・・あのね、それって・・・・」
「凄いよっ!俺も父親か!!嬉しいよ!!幸乃ちゃん、ありがとう!!」

隣に座る彼女を抱き締めた。
修二は震える手でもう一度手の中の写真を見た。
そして幸乃のお腹にそっと手を添えて「ありがとう」と何度も囁き彼女の髪にキスをした。
暫くそのまま2人で写真を見ながら静かに座っていた。

そうしているうちに幸乃が小さな声で話し始めた。
「本当に嬉しい?だって修君の仕事のイメージに影響が無いか、
特に子どもが欲しいことも言っていなかったし・・・悪阻もあって悩んでいたの」
「ごめん、気付いてやれなくて、俺、自分の事ばかりでごめんね」
「ううん、修君もお義父さんも私を凄く大切にしてくれているのがわかったから・・・」
「そうしたら、俺、映画の話は断るよ!」
「どうして・・・?」
「そんな大事な時に幸乃ちゃんを1人に出来ないじゃないか!!」
「そんなことダメだよ!そんなことで修君の世界が、輝きが失うなんて私には耐えられない!」
「映画だけじゃなくて、音楽活動だってもっと多忙になるんだよ。
そんな時に幸乃ちゃんの傍にいられないなんて、そんな非情なこと出来ない!」
「イヤイヤ!私のせいでそんな選択しないで!!」
「幸乃っ!2人の子どもなのに幸乃ちゃんだけ寂しい思いさせるなんて出来ない・・・」
「修君・・・・・」
「ダメだ・・・幸乃ちゃんには悪いけれど、その選択肢もありうるよ・・・
このまま話していたら堂々巡りになるだけだ・・・俺、頭冷やしてくる・・・」


そう言い修二は部屋着からジーンズと厚手のニットに着替えて
ダウンジャケット着て出て行ってしまった。
勢いで出てきてしまったが、マンションのエントランスであるところに電話をした。
時間が時間だけに気が引けたが、ここは悶々としていても解決策が見つからないと思った。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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