2017 / 05
≪ 2017 / 04 2017 / 06 ≫
Page.

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


Page.188

「幸乃はね、修二君に職場近くで告白されてからあなたの職業について
彼女なりに情報収集したのよ。当時のスクラップブックがきっと家のどこかに隠してあるはずよ」
「ええ、当時の彼女の中にはフェニックスというアイドルグループは存在していなかったようです」
「そうなのよ・・・本当に勉強しかやってこなかった子だったから。
あの頃、父親の仕事もだいぶ縮小してしまってね。私はもう社会人になっていたけれど
まだ弟が高校受験する時期だったから。そんなに教育費にお金を掛けられなかったのよ」
「幸乃から聞いています」
「それでね、幸乃は奨学金制度を利用したの。ある程度の成績を取っておかなくちゃいけないからね
それでも女の子だしお小遣いは欲しいでしょう?少しはアルバイトもしていたしね・・・
わき目も振らずに一心不乱な4年間だったと思うわ」
「そんな苦労を・・・」
「でもね、あの子は苦労を苦労と感じない子なのよ。3人姉弟の真ん中で・・・
上下挟まれて、それなりに強くなっていったんじゃないかしら」
「ええ、芯は強いです」
「そうなのよ!芯が強いの。修二君が一番わかっているじゃないの?
あなたが傍にいなくても、きっと大丈夫よ。だってもう既に母親なのよ」
「母は強し・・・でしょうか?」
「そう、それ!!」

修二は自分が何も考えずに、いや、彼女のことを考えずに自分の気持ちだけを
優先させて選択肢を提示したことを恥ずかしく思った。
彩乃は3姉弟の最初の女の子、下の弟は初めての男の子・・・と
幼い頃の幸乃の心情を考えれば卑屈になってもおかしくない。
しかし、そんな中で天性の明るさと芯の強さで幸乃という人間を形成していったのだろう。
それだから彼女が眩しいほどに輝くのだろう。
そしてその輝きに自分が惹かれたのだろうと思った。

修二の中では未だ迷いがある。
彩乃の話を聞いてもすぐには決断できないくらい、
きっと自分は人生の岐路に立たされているのだろう。
ならば慎重に、尚且つ適切な選択をしなければならない。
それは全て愛する者を守るために・・・・。

そんなことを思いながら、彩乃が改めてお茶を淹れるためにキッチンへ立った時
テーブルに置いてある携帯電話が振動した。
「メールかな?」
「そうみたいです」
「今頃・・・・誰かな?」

そう言いながら、彩乃がお茶を淹れた急須を持って椅子に戻って来た。
待ち受け画面見て送信者名を確認しメール画面を開いた。
そして一瞬にして怪訝な顔をした。

「幸乃からなんだけれど・・・空メールなのよ」
「メッセージは何もないんですか?」
「ええ、何もないのよ・・・ヘンよね?」
「俺の方から電話してみます」
「修二君の電話に出るかな?さっき喧嘩したんでしょう?
私の方から電話してみるね」

すぐさま彩乃は幸乃の携帯電話に掛けた。
何度か呼び出しをしているのか、それでも出て欲しい人からの応答はなく・・・。
掛けなおしを数回試み、その後メールを2通ほど送信した。
返信や応答があると思い、2人は固唾を呑んで幸乃の反応を待った。

「やっぱりおかしいわ、喧嘩した後でも私からの応答すら出ないなんて・・・
それとも空メールが答えって解釈して良いのかしら?」
「答えって!?」
「う~~ん、あんまり深刻に考えて欲しくないけれど幸乃が修二君に対して
何の反応も示さないというか、それをも放棄したということなのか」
「そんな・・・・」
「ご、ごめんね。そこまで急に非情になれないわよ、幸乃は・・・」
修二は彩乃の言葉に血が凍りつくような錯覚に陥った。
「幸乃ちゃん・・・」と搾り出すように愛する人の名前を呼ぶだけことだけが精一杯だった。
その時、脳内に「修君!」という幸乃の声が聞こえたような気がした。
スポンサーサイト


この記事へコメントする
















presented by 地球の名言

紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

只今ランキング参加中なり。 ポチッとして頂けたら嬉しいです。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。