2017 / 05
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太陽は天中を過ぎた頃彩乃は一度自宅に帰り
病室には修二と意識の無い幸乃2人だけだった。
帰る前に、自宅のこたつの天板上にあった物を修二に渡した。
渡された物を見た修二は絶句したまま、
それを握り締め何も言わずに無造作にポケットのしまった。


その後2回ほど年配の看護士が様子を見に来た。
先ほど修二は担当医師にカンファレンスルームに呼ばれて幸乃の容態の詳細を聞いた。
とにかく今は絶対安静、暫くは入院が必要とのことで幼稚園の園長にもすぐに連絡し
仕事の方は休むことにした。
念願かなってクラス担任になった彼女にとっては辛いことだが
かけがえのない彼女を守るためには致し方ない選択だった。
明日以降、自分が仕事に行っている間は彩乃や幸乃の両親が交代で来てくれる事となった。
しかし、修二自身の心の整理は正直言ってまだ出来ていない。
そんなことを考えているうちに昨夜からの睡眠不足や疲労等で
再び幸乃のベッドに寄りかかるように眠ってしまった。


髪を何度か梳かれる感じがする。
誰が・・・触っているのか?
この感触は覚えている・・・やわらかくて細い指先。
その持ち主を確かめるように修二は瞼を開きその手を見た。
そして手先から腕、その人を・・・見つめた。
彼女の頬を優しく撫でた。

「目が覚めた?俺の眠り姫・・・」
「うん、おはよう」
「もう、おはようの時間はとっくに過ぎているよ」
「そっか・・・もうそんな時間なんだ」
「どこか痛いところ、苦しいところないか?」
「うん、今はないよ・・・」
「何か飲むか?」
「うん、お水ある?」

修二は小さな冷蔵庫に入っているミネラルウォーターの口を開け、
起き上がろうとする幸乃を押し止めた。
ペットボトルに口を付けて少量口に含み幸乃の顎を優しく捉えて口移しで少しずつ流し込んだ。
彼女が欲しがるだけそれを数回に分けてした。
修二は口の端から流れ出た水をも唇で拭い、顔中にキスの雨を降らせた。
幸乃は自由の利く方の手を彼の身体に回し何度も「ごめんなさい」と謝った。
それに対して彼は「もう、いいから」と彼女を慰めた。
そして掛け布団の上から彼女お腹に手を添え、「この子は母親以上に強い子だ」と言った。
暫くしてジーンズの後ろポケットから彩乃から預かった紙を幸乃に見せた。

「こんなことまで考えていたんだな、ごめん、俺が追い詰めた・・・」
「ううん、これは自分で決めたことだから」
「俺は、幸乃ちゃんの望みは全て叶えたいと思っている。
だけどこれだけは絶対に叶えられない!!」
「でも・・・・」
「ここまでの事態になってもわからないか?
お腹の子だって母親がバカな考えを起こし始めていることを身を以って警告しているのに・・・」
「幸乃ちゃんは俺に仕事を続けて欲しい、映画も挑戦して欲しい
・・・とそう望んでいるならそうする。でもそれでも譲れないものがある。
それは幸乃ちゃんとお腹の子だよ。それを失ってまでも続ける仕事ってあるのかな?」
「それ・・・って・・・私、修君の傍にいていいの?赤ちゃん、産んで良いの?」
「最初からそうして欲しいって言っているのに・・・」
「今の俺にはわかるよ。俺は幸乃ちゃんがいて、赤ん坊がいて、俺が輝くってことを」
「修君・・・・」

彼女の目の前で『それ』を出来るだけ細かくちぎった。
修二のその行為を見て幸乃の目から涙が溢れてきた。
涙に滲んだ彼女の目じりにキスをした。
そして幸乃の方から修二に抱きつきキスを求めた。
彼の下唇を甘噛みし、唇を舌でなぞる。
お互いの吐息も飲み込むように熱い口付けを交わした。

修二は「ここが病院だということを忘れそうになる」と言ってやっと唇をはずした。
その時の彼の顔はニヤリと笑った。
そしても幸乃も修二の気持ちを察し、頬を朱に染め恥ずかしそうに笑った。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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