2017 / 06
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春休み中のクラブの合宿を終え、自宅のあるマンションまで帰って来た。
マンション入り口近くに1台のタクシーが止まっている。
トランクから赤いスーツケースを運転手が取り出しているのが見えた。
後ろの座席から隣のおばさんが降り、そして・・・・この1年間会いたくて仕方がなかった
少し髪が伸びた凪子が降りた。
彼女の姿を目に捉えた途端、一路は疲れた身体などものともせず全力で走り出した。

「一路っ!?」
「凪子、お帰りっ!!!」

抱きつきたいのをかなり我慢して一路は彼女の両腕に手を掛けた。
目の前にいる凪子は、目を瞬いてからにっこりと微笑んだ。
そして彼にだけ聞こえるように「ただいま・・・会いたかったよ」と囁いた。

「あらあら、一路君、合宿から帰って来たの?お帰りなさい。
どこまで行ったの?」
「おばさん、こんにちは。大学の合宿所です」
「そうだったのね・・・あそこは県内だけれど山の中だから結構寒かったでしょう?」
「はい、ちょっと寒かったです」

凪子の母親に声を掛けられて慌てて凪子の腕から手を離した。
手を下ろそうとしたが、一路の左手を凪子の手が掴んだ。

「一路、背が高くなったね・・・」
「そうかな?」
「うん、そうだよ、1年前は私よりちょっと大きかったのに、今は見上げるほどだよ?
いつの間にか手も大きくなったような気がするから」
「この1年でグングン伸びたかも」
「これからもっと伸びるね・・・きっと」
「まぁね、母親はそんなに大きくないけれど、父親は背が高いから」
「お父さんには会ってるの?」
「うん・・・たまにね、色々相談にのってもらっているよ」
「そっか・・・」

マンションの入り口で凪子の母親が自宅へ帰るように声を掛けて来た。
凪子はギュッと力を込めて一路の手を繋いだままだった。
彼女の手荷物を自分のスポーツバッグと一緒に持った。
エレベーターに乗り、それからそれぞれの自宅へ帰った。
凪子家族は今夜は親子水入らずで帰国祝いをするという。
一路とは翌日会う約束をした。

自宅には祖父母がいた。
祖母は母の代わりに食事の仕度をし、祖父は夕刊を読んでいた。
一路が制服から普段着に着替えてリビングに入って来て
新聞からふと視線を外した祖父が意味深な笑いをした。
意図するところがわかり、一路は耳まで真っ赤になった。
照れ隠しで派手にお菓子の入っている缶を開けて祖母に窘められた。


タクシーから降りて一番に会いたい人から大きな声で名前を呼ばれた。
今まで眠っていたのか・・・彼の声を聴いた途端、心が躍動したかのように思えた。
この1年で更に長身で逞しくなった躯体をまともに見ることは出来なかった。
母親がいてくれたお陰でそんな大胆な行動は止まった。

渡英したばかりの頃、挨拶代わりのハグやキスに戸惑ったが
人間慣れというのは怖いもので・・・・。
3ヶ月も経つと意外と受け入れらるようになった。

その勢いもあってか、さっき一路を目にした途端
抱きついてキスをしたい衝動に駆られた自分に改めて驚く。
そして1年前より今のほうが彼への気持ちがより強いと感じた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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