2017 / 09
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電話は隣家の一路からだった。
昼過ぎには祖父母と母親が出掛けてしまうのでその頃会おうということだった。
私は先ほどの悲観的な考えを頭の隅に追いやり、
午後からにわか雨の予報もあったので
ベランダに干してある洗濯物を和室に広げて部屋干しした。
仲が良かった元クラスメート数人に電話をして帰国の報告をした。
それから沈んだ心のまま一路の家のインターホンを押した。

「凪子、いらっしゃい!入って、まだ母さんはいるけれど」
「こんにちは、お邪魔します。おばさん、ご無沙汰しています。
昨日、帰国しました。これ少しですがお土産です」
「なっちゃん、お帰りなさい、元気そうね、
まぁ!お土産?ありがとう。これから私、夜勤なのよ・・・」
「おばあちゃま達は?」
「母達は、趣味仲間と食事会らしいわ。じゃぁ、あと・・・よろしくね、行って来ます」
「行ってらっしゃい、おばさん」
「一路、あとお願いね。なっちゃんが帰って来て嬉しいのはわかるけれど・・・
わかってるわよね?」
「わかってるよ!ったく、心配性だな~~遅れるぞ!?行ってらっしゃい!!」

一路は半ば強引に母親を玄関から送り出した。
共通廊下には楽しそうな彼の母親の笑い声が響いてた。

「ったく、あれでも母親かよ!」
「一路ったら・・・」
「ごめん、こんなところで立ち話もおかしいから、俺の部屋で待っていて」
「うん、でも散らかってるんじゃないの?」
「うっ!それは~否めない。リビングがいいか?」
「ううん、いいよ、一路の部屋がスッキリしたことないもんね、それが普通だし」
「でも、結構片付けたんだけどな~~」

廊下で話し、一路はキッチンへ私は彼の部屋へ行った。
彼の部屋は私の部屋と同じ位置にある。
窓際には黒っぽい机が置いてあり、座った位置から背中合わせにベッドが置いてある。
CDコンポが黒っぽい本棚に置いてあり、その前に無造作に学生かばんが放り出してある。
本棚には戸が付いていないのでそのまま本を取り出すことが出来る。
私は数年で一路の興味が大きく変わったことが揃えている本でわかった。
机の上に学内で身に付けることを義務付けられている名札を指で転がすように触った。

「お待たせ、林檎ジュースでいい?」
「うん、いいよ、わぁ、お菓子もいっぱいだわ!そんなに食べられないよ」
「これ、俺が食べるから・・・食っても食っても腹が空く育ち盛りだからさ~
母さんがさっきドーナツ揚げてくれていた」
「相変わらず、おばさん、マメだね~」
「まぁね、働いているとはいえ家でも何かしていないと落ち着かないらしいよ
寝ていても何かしているんじゃないかな?まるで回遊魚みたいだよ」
「あははは、何それ?」

一路はキッチンから持って来たジュースとドーナツやその他のお菓子を机に置いた。
そして祖父母の部屋から小さな折り畳みのテーブルを持って来た。
正方形そのテーブルは私達が小さい頃からあったもので
裏には何故か油性のマジックで私と一路と妹の名前が落書きしてあった。

「あぁ、まだこのテーブル健在なのね?あっ!裏にまだ落書きがある!」
「そうなんだよ、なんだか使いやすいし、
ばあちゃんが縫い物する時の丁度好いテーブルになっているらしいよ」
「この上でお絵かきしたり、ゲームしたり、本読んだり・・・色々したね」
「うん、これは・・・俺らの事を一番知っているかもな・・・」
「そうだね・・・そうかもね」
「ところでさ~さっきお袋にはお土産渡していたけれど、
俺だけに!というのは無いのかな~?」
「あれ~催促~?」
「うん、催促!催促!1年も待ったんだよ?そのご褒美はないのかな~って・・・」
「・・・・あるよ。でも男の子だから全然趣味がわからないから
イギリスのブランドのキーホルダーなの」
「開けていい?」

小さな箱を前にして食入るように見つめている一路ににっこり微笑み頷いた。
一路はブランドのロゴの入った包装紙を丁寧に剥がし、小箱に入ったキーホルダーを取り出した。
自分の目の高さにそれを持ち上げ嬉しそうに「ありがとう」と何度も言った。
そして早速自分の自宅の鍵に付けた。
ジュースを飲みながら暫く留学の時の面白いエピソードや彼の学内でのこと等を
お互い報告しながら色々話をした。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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