2017 / 05
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暫くお喋りしていたが、なんとなく会話も途切れがちになってきた頃、
凪子は頭の中で隅に追いやったはずの妹の言葉を思い出していた。
お互いに1年前に約束していたことが気になっているのがわかる。
それをどう切り出して良いのかがわからないだけ・・・。
でもその口火を切ったのは凪子だった。

「一路、1年前のこと覚えているよね?」
「うん、覚えている・・・『待っている』ってことだろう?」
「そう、そのこと・・・でも一路はそうじゃないんだよ・・・ね?」
「なんで?そう思うの?」
「だって・・・ふうちゃんと付き合い始めたんでしょう?」
「誰がそんなことを?俺は誰とも付き合い始めていない。
確かにこないだのバレンタインにいつも通りアイツからチョコは貰ってけれど
ホワイトデーのお返しすらあげてないし・・・・」
「今年は『本命チョコ』あげるって手紙に書いてあったけれど相手は一路だったのね」

そしてまた会話は途絶えてしまった。
ジュースを飲み干してしまったグラスをなんとなく触っている一路。
その手元を見ている凪子。
部屋の片隅に置いてあるアナログの目覚まし時計の秒針の音だけが
「コチッコチッ」と鳴っていた。
凪子にはもう一つ気がかりなことが、頭の中でもたげ始めた。
言い出すべきか否か、迷っている内に一路が口を開いた。

「凪子、俺、待っていたんだ・・・」
「うん、わかってる」
「でも、たった1年だけでこんなに・・・何ていうか綺麗になって
向こうでも結構、モテたんじゃないか?」
「そんなことないよ・・・それに日本人は年齢の割りには年下に見られるから」
「向こうの人とは、挨拶代わりに抱き合ったりとか・・・」
「そんなこと気にしているの?」
「そんなことって!?俺は毎日、毎日、そんなことばかり気になっていたよ!
クラスメートとの写真に男子学生も寄り添って写っていたら・・・正直写真を破りたくなった」
「破っちゃったの?」
「破ってないけれど・・・」
「一路・・・・」

確かにそうかも・・・。
渡英したばかりの頃は面食らった習慣も3ヶ月ほどすれば
普通に思えてくる自分の順応さに正直驚いた。

夏休みやクリスマス休暇で帰国した時も
特に彼からこんな態度は取られなかったが、
こんな正直に自分の感情をぶつけてくれる、
ヤキモチを焼いてくれる彼をカワイイと思った。
それでも妹に言われた『キスしたこと』ということは気になっていた。

「私のことより、一路のほうがこの1年結構楽しかったんじゃないの?」
「何だよ、それ?」
「だって、ふうちゃんからチョコ貰ったり、キスもした仲なんでしょう?」
「誰だよ・・・そんなデタラメ言うのは!?」
「私の妹が嘘つくとは思えないから・・・」
「どこまでお人好しなんだよ!凪子は!!」
「怒んないでよ、だってそうなんでしょう?私の事ばかり言わないで
自分だって・・・楽しく・・・」

彼のヤキモチを可愛いと思いながらも自分は妹の言葉に翻弄され
彼以上にヤキモチを妬いている自分がそこにいた。
でも彼を責める言葉を私の口から紡ぐことを阻止された。
彼の唇によって私のそれは塞がれてしまったから・・・。

テーブルに置いてあったグラスがカチャカチャと音を立てた。
一路は左手で凪子の右手を掴み、右手で彼女の顎を掴んだ。
唇を押し付けるように口付けた。
その拍子に彼女の後ろにあるベッドに彼女の頭を寄り掛かる形となった。
突発的なことで驚いた凪子は開いている方の手で一路の胸を叩き
性急なキスを止めさせようと試みたが心地好い感触に徐々に抵抗を止めた。

一度、一路は唇を離し凪子の隣に座りなおした。
腕の中に優しく包み込むように抱き締め「びっくりさせて、ごめん」と言った。
凪子は彼の両頬に手を添えて自ら啄ばむような口付けを繰り返した。

「キスはね・・・こうするのよ」
「・・・やっぱり慣れている」
「違うよ・・・一路だからこういう風に出来るのよ?」
「そういうものなのかな?」
「好きだから・・・自然にこうしたくなるのよ」
「自然の成り行きかな?」
「そうね・・・そういうことかな!?」

お互い見合って微笑み合い、もう一度唇を寄せ合った。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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