2017 / 05
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2人、無言のまま松原君との待ち合わせ場所のファミレスまで来てしまった。
ファミレスの大きな窓から覗くように店内の様子を伺う一路。
凪子は一路に半ば手を引っ張られるように入り口の前に立った。
ベビーカーや車椅子等が入店しやすいように
入り口の片側は緩やかなスロープになっている。
そこは店内からは死角となっていた。
手を繋いだままの一路はもう1度凪子を覗き込んだ。

「ホントに1人で大丈夫?」
「うん、大丈夫・・・それにもうお店にいるみたいだから私、行くね、
ここまで送ってくれてありがとう」
「帰ったら・・・うちに来て、話そう」
「うん、わかった・・・」
「いや、やっぱり1時間したら迎えに来るから」
「大丈夫だよぉ?」
「俺の気が済まないから、そうさせてくれよ」
「うん、わかった・・・今から1時間後にね・・・じゃぁ、行って来るね」
「あぁ、行ってらっしゃい、凪子・・・ちょっと・・・」

送り出そうとする私をもう1度呼び止めた一路は人通りのある歩道や
店内からも死角となるもう少し奥まったところに私を引っ張り込んだ。
ふわっと抱き締めて額にそっと唇を寄せた。
一瞬何が起こったかわからなくて・・・
キュンと首を竦めて彼の唇が額から離れた時顔を上げた。

声には出さず「行って来い」と口の形を模った
彼に小さく手を振り私はファミレスへ入って行った。


店内はよく空調がきいているせいか、
外の蒸し暑さからスッと肌に纏わり付く空気が緩和された。
接客のために近づいてきたウェイトレスに待ち合わせの旨を伝え
そのまま真っ直ぐ松原君の座るテーブルへ歩いて行った。

「お待たせしちゃった?」
「いや・・・平気だけど、何か頼む?」
「うん、歩いてきたから少し喉が渇いちゃったかも」

注文のためのブザーを押してから程なくしてウェイターが私達のテーブルに来た。
セルフサービスでドリンクを頼み、アイスティを自分の前に置いた。
お互い一口飲んで黙ってしまった。
大きな窓から街並みや大通りを走り抜ける自動車やバスをなんとなく眺めていた。
そしておもむろに松原君が口を開いた。

「さっき、一緒にいたヤツ誰?」
「あぁ、お隣に住んでいる幼馴染」
「ふぅん、幼馴染だけの存在なの?」
「何が言いたいの?」
「いや・・・特にないけど」
「松原君、核心を話さないつもり?」
「核心って?」
「高等部の英語の先生に『私を待っている』って話したんだって?」
「あぁ、話したよ、前に言ったじゃないか!?
留学前に俺、箕面のこと諦めないって!」
「あの話は終わったんじゃなかった?それに私は待たれても困るの」
「大学だって同じを希望しているんだろう?
だったら俺にも望みはあるんだよね?同じサークルにも入ろうよ
俺、箕面のために英語サークルにも入ったから・・・」

私の事なんてお構い無しに話し続ける松原君を呆れながら見つめていた。
彼の身勝手な妄想に少し眩暈を感じた。
私に話す機会を与えず、ただただ喋り続けている。
立場を反対に置き換えれば私に意見を言わせず、
完璧に言い包めるという方法である。
私の中でふつふつと怒りににも似た感情が生まれ始めた。

『勝手に私の進路先を決めてもらいたくない!』
『私はとっくに松原君の事は忘れているのに!』
『私はあなたとは付き合いたくないのに!』
『私には・・・私には好きな人がいるのにっ!』

そう口に出していたかは自分でもわからないが、
私はファミレスの椅子が「ガタン!」と
音を立てて倒れるのもお構いなしに立ち上がった。

そして店内にいたお客さんが驚いて
私達の方を凝視するのも構わず大きな声を張上げていた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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