2017 / 06
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第一志望の大学の試験が終わってから
やっと自分がどこで何をしている実感が掴めて来た。
それまでが無意識に生活してきたわけではないが、
去年、高2の時のクラスメートの松原君に外部の大学受験を宣言してから
脇目も振らず、ただただこの日のために邁進してきた。

そんな生活の中で隣に住む一路は私の気持ちを支えてくれた。
放課後、渡り廊下で偶然会って手をそっと繋いでくれた。

「もう帰るの?」
「いや・・・これから図書館に寄ってから帰る」
「そうなの?」
「うん、凪子は?」
「私はこのまま真っ直ぐ帰ろうかな・・・」
「凪子、疲れているね・・・ちゃんと睡眠とっている?」
「うん、大丈夫、ありがとうね」
「あと少しだから・・・」
「一路が・・・いてくれて良かった」

今までは普通に手を繋いでいたが、いよいよ受験本番となる頃は
所謂『恋人繋ぎ』をしてくれた。
誰もいない渡り廊下で2人、
陽が傾きかけた夕焼け色に染まりつつ校庭を眺めていた。

繋いだ手から伝わる温もりだけでも、
何も言わなくても一路は私を励ましてくれる。
逃げ出してしまいそうになる現実から、
挫けそうになる弱い心を奮い立たせてくれた。

妹との関係を心配し両親は
受験時期に入ってすぐ私を祖父母宅へ預けた。
だから一路と会えるのは校内だけ。
尚更私は、こうして彼に会える事を嬉しく感じ、
そのひと時を大切に思えた。


一路自身を私にとって『受験のお守り』のように思っていたのかもしれない。
彼の手の温もりを感じるだけで『無理かも・・・』と
躊躇する偏差値の大学への挑戦も出来たから。

だからこうして合格発表も母親の同伴を退けて彼に付いて来て貰った。
それでも受験日から発表までの数日間は落ち着きがなかった。
久しく妹と派手な喧嘩もしていなかったが些細なことで
双方泣くほどの大喧嘩をした。
それほど神経が逆立っていたのだろう。

「凪子、一昨日の夜、風花と喧嘩した?」
「えっ!?なんで知ってるの?」

最寄り駅から電車に乗り入り口と反対側の扉近くに立った途端こう聞かれた。

「そりゃぁ、隣近所、驚くほどの怒号だったから・・・」
「あ~~~聞こえた?」
「隣だもん、聞こえるよ」
「う~~~~」
「ウチの2件隣の犬もワンワン吠えていたし」
「そうなの!?それは気が付かなかったわ・・・」
「それでどうしたんだよ?」
「大した事ないのよ・・・今までお互い鬱積していたからね
それが『ドッカン!』って爆発したって言うか・・・そんな感じ」
「ふ~~ん、そうか」

きっかけは些細な一言だった。
風花が地雷をご丁寧に踏んでくれた。
いや、そうじゃなくて・・・。
バズーカ砲で鬱積したいたものをぶっ放してくれたんだと思う。
決して体調が万全でない妹が私が受験生ということもあって
両親から色々諌められていたらしく・・・
今まで自宅での生活では自由にしていた妹にとってかなりの試練だったらしい。
「こういうことも必要だ」と両親が急に厳しくなったからだろうか。
姉として、申し訳ない気持ちになったのは言うまでもない。

「お姉ちゃん、第一志望受かったらこの家から出て行くんでしょ?」
「隣の県だけど、ここからだと遠いからおじいちゃん家から通うと思うわ」
「じゃぁ、やっぱり、受かってもらわなくちゃね!
あたしにとってお姉ちゃんは目の上のタンコブみたいな存在だし
これで心置きなく一路と付き合えるもん!」
「何よそれ?」

数年ぶりの派手な姉妹喧嘩の火蓋は切って落とされた。
まさか、隣近所に筒抜けだとは思わなかったが・・・。
ご近所の犬をも動揺させているとは。
改めてそのときの様子を第三者の立場から聞いて赤面してしまった。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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