2017 / 06
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暫しの別れを惜しみ、私は入学式の前に実家から離れた。
一路とはあの日から殆ど会っていない。

携帯電話の機械越しやメールのやり取りはしていた。
でも、彼の大学受験が佳境に入ってきた頃には週に1回メールがあるくらい。
連絡がないから元気な証拠・・・と頭で理解していても
春からは4回生になる不安や家族とのことで悩んでいたから無性に彼に会いたかった。
とても恋しかった。


大学に入学して間が無しに父が地方都市に転勤となってしまった。
風花の体調を考えて、今の住まいよりも環境などが良いということで
今まで住んでいた家は人に貸す形で、両親と妹は引っ越してしまった。
私は、祖父母宅に住み始めていたので殆ど生活ペースは変わらなかった。
それでも隣県に実家があるのとないのでは大きく違い、
まして日々の生活が忙しくてなかなか一路にも会う事が出来なかった。

そんな中、一度だけ2回生の大学祭に一路が来てくれた。
この時期キャンパス内でひと際秋を感じられる場所・・・。
正門近くの黄金色の色づいた銀杏並木の一角で彼と待ち合わせをした。

私はサークルの模擬店当番を早々に切り上げて待ち合わせ場所に急ぐ。
昨夜、遅くに一路からメールが届いた。

『明日、凪子の大学祭に行く。
○○の前で11:30に待ち合わせ、OK?
来なくてもずっと待っているから  一路 』

『元気?』とか
『会いたい』とか
『凪子、好きだ』とか・・・
いやいや、そういうことはきっと期待しても無駄かもしれない。

もっと気の利いた言葉も無く、用件のみのメール文。
それでも私はそのそっけない文章も嬉しかった。
待ち焦がれてやっと貰えたラブレターのように思えた。
その大切な文章が永久保存設定した携帯電話を握り締めて
私は待ち合わせ場所へ向かった。

あの角を曲がれば一路に会える。
そう思っただけで足が震えてきた。
自分がちゃんと歩けているかわからなくなってしまった。

待ち合わせ場所には特に模擬店等は出店されておらず、
良い雰囲気の散歩道となっているのに
その場と似合わない人だかりとなっていた。
10人前後の人を縫うように歩き待ち合わせ場所へ近づいたとき
ふいに私は斜め後ろから呼び止められた。

「凪子?」
「えっ!?だ・・・れ?」
「忘れちゃった?」
「一路・・・なの?」
「うん、会いたかった・・・」

気が付けば私は彼の腕の中にすっぽりと納まった形となっていた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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