2017 / 07
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凪子が大学進学のために実家を出て行った。
隣県の祖父母の家で在学中は暮らすという。
彼女を応援すると決めたときからそのことは頭では納得していた。
でも、心は全く受け入れることは出来なかった。
だからいよいよ彼女が家を出るとき、うちにも挨拶に来た。
俺の母親や祖父母に挨拶するためだと・・・。

「おばさん、これから私、祖父の家に行くんです。
たまにはここへ帰ってくると思うのですが・・・一応ご挨拶と思って」
「まぁ、なっちゃん、ご丁寧にありがとう。
いよいよ大学生ね。きっと楽しいわよ、頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
「一路を呼ぶ?っていうか、なっちゃんと暫く会えないのに
あの子、部屋から出て来ないのよ・・・ちょっと!一路、ちゃんと挨拶しなさいっ!」
「おばさん、いいんです。もう・・・えっと、一応お別れはしたから・・・」
「そうなの?それでも、礼儀だけは・・・」
「ホント、良いんです!」

凪子は手を目の前でブンブンと振るようにして一路のお母さんに話した。
きっと・・・凪子は、泣き笑いの様な顔をして母と話しているのだろう。
声の微妙な抑揚で彼女の心情が壁越しでも手に取るように感じられた。
今すぐにでも部屋から飛び出し、
家族の前でも構わず彼女を力いっぱい抱き締めたい衝動に駆られた。
しかし、今はそれをやれる時期ではないと・・・もう一歩だとしても自覚していた。
いつかもっと自分の心が強くなった時、そしてお互いにもっと心が強く惹かれあっていると
確信できた時まで我慢すると決めたから・・・。

彼女が留学後、お土産にくれたキーホルダーを手に握り締めて
2日前の彼女の儚げな面持ちを思い出しながら、
彼女への想いが涙という形となって溢れ出したのを感じたのは
そうなってからだいぶ経ってからだった。


彼女が祖父母に家に身を寄せてから暫くして
燐家は父親の転勤に伴い引越をしていった。
それまで何かと煩く付き纏っていた風花も体調を考慮して
転勤先へ付いていくこととなった。
必然的に学校も転校となってしまった。
それと同時に俺は風花にハッキリした態度を取ることにした。
それでも風花は尚も食下がって来たが、今までの自分の曖昧な態度が
凪子を、いや、この姉妹を犬猿の仲にさせてしまった一因であると思ったからだ。

「一路、ここを離れても風花と遠恋してよね?
お姉ちゃんに渡したくないから」
「俺は、物じゃないし」
「言い方が悪かったのは、ごめんなさい。でも小学校の時から一路が好きなの!
風花にとって一路は同級生だけれど憧れな存在だった。
小さい頃から体が弱かったあたしにとって、
元気に走り回れる、お姉ちゃんも一路も憧れなの!」
「そのこと、凪子に話したのか?」
「言えるはずないよ。お姉ちゃんは憧れの存在と同時に妬ましい存在だし・・・」
「何だよ、それ・・・?」
「一人っ子の一路にはわかんないよ」
「いずれにしても俺にとって風花はお隣の同級生であって、
それ以下でもそれ以上でもないから
これから先、俺に憧れる気持ちを持ってくれるのは構わないけれど
それに俺が応えることは出来ない・・・
俺にとって恋愛対象は凪子ただ1人だから」

その後風花が俺を涙ながらになじり、それっきり引っ越していってしまった。
恋に恋しているような風花にもきっと彼女を包み込んでくれるような男性(ひと)に
巡り合えようにと友人として祈らずにはいられなかった。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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