2017 / 11
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凪子は祖父母宅へ越してから心にぽっかりと穴が開いてしまった。
それでも日々の時間は自分の気持ちとは関係なく、
一つのことに固執しているわけにもいかなかった。
高等部に進級し、この校舎のどこかに凪子がいるような残像を
暫くは探し続けていたようだった。

そんな生活の中で凪子との電話やメールのやり取りが
気持ちの上での支えとなっていた。
彼女の学業を考えて通話は1週間に1~2回。
メールはほぼ毎日。
お互いその日にあったことを写メ付きでメールを交わした。
そのお陰で彼女が引っ越してしまった当初よりも寂しさは薄らいでいった。


彼女には一言も話していはいないが、放課後何度も彼女の大学へ足を運んだ。
最初は偶然を装って『彼女に会えるのでは!?』という一縷の望みを抱いていたが
そのうちそうではなくこのキャンパス内に彼女がいることを
そして伸び伸びとキャンパスライフを謳歌しているであろうことを
確認すると同時にそれが自分にとって喜びとなっていた。

いつも自分が座るベンチは彼女の学部がある校舎が見える。
遠目に何度か校舎移動のための彼女を見かけた。
その時自分の心臓が早鐘のように鳴り響き
全ての音が聞こえなくなり彼女へ走り出そうとしていた。
こんなにも自分の中に凪子がいっぱいになっていたのだと改めて感じた瞬間だった。
だからこそもっと自分が強くなり、自信を持ち彼女と対等となったときに
改めて彼女に会おうと心に決めた。


高2の秋、彼女に一通のメールを送信した。

『明日、凪子の大学祭に行く。
○○の前で11:30に待ち合わせ、OK?
来なくてもずっと待っているから  一路 』

『会いたい』とか『元気?』とか『好きだ』という言葉敢えて使わず
ある意味彼女の気持ちに賭けをしたのかもしれない。
いつものベンチに座り暫し彼女を待った。

1年以上、殆ど習慣化していた彼女の大学へ足を運んでいた所為か
決まった時間帯にその場にいたお陰で顔馴染みになってしまった女子学生が数人いた。

「こんにちは!いつもここに来ている高校生だよね?」
「君のその制服って、隣県の私立大付属高校じゃないの?」
「ところで何年生?」
「結構イケメンじゃない?」
「お姉さん達と遊ばない?」

などなど、かなり大人っぽい雰囲気の女子学生数人に
所謂『逆ナン』常態で矢継ぎ早に話し掛けられた。
その中には恐らく凪子と同じ学部の女性もいた。
人だかりの向こう側に会いたくて堪らなかった女性
凪子の姿を一瞬捉えた。

「凪子?」
「えっ!?だ・・・れ?」

その声に円陣を組まれたような人だかりも自然と切れた。
スッと彼女の前に立ち出来るだけ優しい声で話掛けた。

「忘れちゃった?」
「一路・・・なの?」

目を大きく見開いた凪子がとても可愛く思えた瞬間、
右手で彼女の左手を引っ張り自分の腕の中にすっぽりと抱き寄せた。

「うん、会いたかった・・・」

周りの視線など構わずに抱き締めた腕に力を込めて
この1年で更に背丈が高くなったお陰で自分の顎を彼女の頭に置く形となり
そして彼女の髪とこめかみにキスをした。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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