2017 / 05
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ここは両親がよく小さな俺を散歩に連れてきてくれたところ。
当時母親が連日の研究で家に帰って来れない親父の顔を忘れないように
昼食用のお弁当を持ってこの樫の木で親子3人穏やかに過ごしたものだった。

それも長く続くこともなく・・・親父の留学を機に両親は離婚してしまった。
自分の心が傷付くということを幼心にも認識した。

しかしそれは今自分の隣で穏やかな笑顔でいてくれている凪子により、
また彼女の家族により癒されていったと言っても過言ではない。
だから今更だがここに来ることもできたし、
古傷を彼女にさらけ出せることもできた。
そして・・・そこからもう1歩前に進むこともできると確信した。


「凪子は、文化祭に戻らなくちゃダメだよね?」
「ううん、いいよ、サークルの模擬店の当番は終わっているし・・・
特に見て回りたいところも無いから」
「そっか・・・」
「それより一路はどこか見たいところあるの?
案内するよ、私の学部のある方へ行ってみる?」
「いや・・・いいよ。俺さ・・・ちょっと・・・」


俺は凪子に言いよどんだ。
その態度に彼女は眉をひそめながらも、
繋いでいる手に反対側の手を重ね話すことを無言で促してくれた。

「俺、凪子に話があるんだ」
「うん、そうなのね・・・でも、それって私にとって嫌なことじゃないよね?」

凪子はちょっとおどけて、でも少し不安げに俺の顔を覗き込んだ。

「いや、多分・・・そうじゃないと思う」
「じゃぁ、話して・・・そうじゃないと信じているから」

そう言いながら両手で俺の手をギュッと握り締め
俺の肩に自分の頭をともたげさせた。
手のひらから伝わる彼女の心のぬくもりに包まれて
肩口から匂い立つ彼女の香りに酔いそうになりながら俺は静かに話し始めた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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