2017 / 06
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桜の花びらは殆ど散ってしまい葉桜も趣があっていいなと思いつつ
学生服とは違うスーツで身を包み、
彼女の合格発表と同じ場所に立っていた。
まだまだあどけない顔つきの人もいれば、
自分より何歳かは年上であろうと思わせるような人もいる
大きな講堂に続く道は新入生やその親などでいっぱいだった。

あの日・・・・。
凪子に心のうちを吐露した日、俺は彼女に抱かれた。
お互い初めてのことでも互いの心を満たすことができた。
ただただ優しく、俺はまるでゆりかごに揺られているかのように安心した。
そしてその日を境に俺はがむしゃら勉強に没頭した。


「一路、母さんと一緒に先に講堂へ行っているぞ!」
「ああ、いいよ。俺は・・・学部ごとに着席するみたいだから」
「そのようだな、じゃぁ、終わったら、携帯に電話しろよ。
帰りはどうするか、母さんが気にしているみたいだから・・・」
「了解!じゃぁ・・・また後で・・・・あっ!親父!」
「なんだ?」
「いや・・・さぁ、別に今言うことじゃないけど・・・
でも、あのさぁ、今までありがとう。親父のおかげで人生の目標が定まったし
これからもよろしく、それと・・・お袋のこと、もう苦労させんなよ!」
「一路・・・そうだな、そうするよ、大切な人だからな・・・
お前も彼女の手を離すんじゃないぞ」
「わかっているよ、そうするよ、じゃぁ、また!」

俺は父親と短い会話をしてかた入学式に臨んだ。


思いのほか時間の掛かった入学式を終え、
講堂の大きな扉前で「う~んっ!」と軽く伸びをした。

父親に電話をし、いつかの樫の木の傍で待ち合わせをした。
式の間中あくびを何度もかみ殺して凌いでいたので
電話を切った後ドッと疲労を感じてしまった。
きちんと結んでいたネクタイが急に息苦しさを感じ、おもむろにネクタイを緩めた。

「一路っ!」

講堂の階段下に淡いオレンジ色のサマーニットのチュニックと黒いパンツを着た
凪子が春風に少し伸びたウェーブのかかった髪をなびかせて
小さく手を振りながら近づいてきた。

「凪子!?なんでここにいるの?」
「式が終わるまで待っていたの。入学おめでとう!また、同じ学校に通えるね」
「でも・・・学部は違うし、学年だって違うし・・・」
「あたりまえじゃん!一路が中学生のときと同じに3年離れているんだもん。
そこは仕方ないよ。でもね、私はまた一路と同じ学校、大学に通えることが何より嬉しいのよ」
「凪子・・・・」
「いつも、これからも、ずっと・・・一緒ね、絶対よ?
私にとって一路は・・・友達以上の存在だから・・・さぁ、行こう!」
「どこへ?」
「うん?あっちよ」

そう言った凪子は照れ笑いを浮かべて
自分たちの位置からも確認できる樫の木の方へ指を指した。
うなずきながら彼女の手をしっかり手を取り、
そこで待つ人たちに向かって2人同時に歩き出した。





                ―おわり―
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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