2017 / 06
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住まいは2DKであろうか。
玄関には子どもの手押し車のようなおもちゃがあり、
網状になった袋にプリンのカップやスコップやバケツ、
プラスチックの車のおもちゃがフックに引っ掛けられていた。
たたきの隅には男性ものの大きめなスニーカーが置いてあり
それを見た途端、俺の胸の奥がチリっと痛んだ。

借家にしては広めの玄関にそれぞれが6畳サイズのダイニングキッチンと
茶の間と寝室という間取りだった。
ダイニングには木製の小さなテーブルセットが置いてある。
通されたのはナチュラルカントリー調のリビング代わりの茶の間だった。
入ってすぐの壁には大きめのコルクボードが掛かっておりそこには
彼女とその子どもの写真が沢山貼ってあった。
ひときわ目を引いた写真は生まれたばかりの赤ん坊だろうか・・・。
眠る彼にそっと頬を寄せて愛おしそうに優しい眼差しで見つめている。
彼女の目じりには・・・涙が滲んでいた。

「それ・・・生まれたばかりのときの写真」
「うん・・・そうみたいだな」
「病院でね・・・撮ったの」
「ちっちゃいな」
「生まれたときは・・・ぎりぎり早産で3000gなかったの」
「そっか・・・大変だったな・・・」
「そこ、座ってね、お茶を淹れたから」
「ありがとう」

俺は写真が見えるローテーブル前にあぐらをかいた。
彼女がほうじ茶を淹れてキッチンから戻ってきた。
あの頃と変わらない食器。
あの頃と変わらない好み。
そう思ったら熱いお茶の湯気のせいでは決してなく
目頭が熱くなった。

お互い湯飲みから沸き立つ湯気を眺めながら言葉を交わすことなく
静かに時間だけが経っていった。
しかしその静寂を俺が破った。

「玄関に置いてあったスニーカーは?」
「あれは・・・」
「旦那の・・・いや、彼氏・・・?」
「・・・・・・」
「そうじゃないよな?」
「・・・・うん」
「じゃぁ、誰の?」
「あれは・・・里津さんところの息子、幼馴染の靴で
同じ敷地内の住んでいるとはいえ母子家庭には変わりないから
安全のために置いてあるの」
「そっか・・・」

少し居心地の悪い気持ちでいたが、和華子からそんな話を聞き
どこかホッとしている自分に苦笑してしまった。
庭先から子どもの笑い声だろうか。
楽しそうな声が聞こえてきた。
それを合図に和華子は今まで湯飲みを見つめながら話していたが、
俺の目を見つめて・・・何かを決心するかのように口を開いた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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