2017 / 06
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「今日は・・・どうしてあそこにいたの?」
「ある写真誌に君が載っていたから・・・
いや、厳密に言えばあのキーホルダーを見かけたんだ」

そう言い部屋の隅の方に置いてあるあの写真と同じトートバッグを指差した。
指先に視線を移し彼女は一つ大きくため息を吐いた。
そしてひとり言のようにぽつぽつと静かに話し始めた。

「何もかも置いていくつもりだった。
でも出来なかったの・・・。
思い出をなくしてしまったら出逢ったことを否定してしまうようで。
それに・・・出逢ったことで
その先の結果をも自分の手から零れ落ちそうだったから」

彼女は最初に俺が見惚れた写真を眺めながら話していた。

「そのおかげでまた、和華子を見つけられた」
「うん・・・・」
「今、こうなってしまったことを責める気全然ない。
でも、あの頃のことを・・・その・・・後悔しているのか?」
「・・・・・・」
「ごめん・・・こういう言い方こそ責めているようだよな」
「ううん、後悔していないよ。あの頃があったから今があるから
むしろ感謝しているの。マオさんに逢えなかったら
こんな幸せ手に入らなかったかもしれないから」
「幸せ?」
「うん、幸せ・・・よ」

少し疑問系になった和華子の言葉に引っかかりを感じた。
お茶を淹れてくると席を立った彼女を目で追いながら
外から聞こえてくるはつらつとした子どもらしい笑い声に耳を傾けた。
一番気になっていることを、
しかしその答えを恐れている自分がいることを認めた。

「あの子・・・元気いいな」
「あっくんのこと?」
「うん、『あっくん』って本当の名前は?」
「映(あきら)っていうのもうじき2歳になるわ」
「結婚したのか?」
「していないわ・・・」
「じゃぁ、シングルで育てているのか?」
「ええ、そうよ」
「父親を・・・聞いてもいいか?」
「・・・・・」

彼女は言うか言うまいかしているところに引き戸の玄関扉が
音とを立てて開き子どもを抱いた男性が入ってきた。
履いている靴を上手に脱ぎ捨て、抱かれている腕から逃れて
パタパタと足音を響かせて子どもが部屋に入ってきた。
そして母親である彼女のところではなく自分が座っている膝の上に
自分の指定席のようにだというように座った。
小さな顔を向けて「ブーブーあっち!」と言いながら
俺に純真無垢な笑顔を投げかけてくれた。
ふわりとミルクのような優しい香りがした。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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