2017 / 05
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表の喧騒とは別世界のようにここには静かである。
時折、琥珀色の液体の氷が溶けるのか静寂の中で『カラン』と音を立てる。
薄暗いダウンライトがその静かさを際立たせていた。
2人の男性がローテーブルを挟みソファにゆったりと腰掛けていた。
端から見れば・・・静かに酒を楽しんでいるようにも見える。
バーの個室の外からはそんな印象を受けた。

新進俳優と売れっ子アイドルグループの一人がお忍びでバーの個室で
酒を酌み交わしていれば・・・。
芸能リポーターなら飛びつくはずがない。
ましてや話の内容を聞けば尚更である。

「全部、事情を聞きましたよ」
「そうか・・・」
「それだけですか?リアクションは?」
「いや・・・じたばた言い訳しても仕方が無いし
俺もそれなりにあの頃より大人になったから」
「彼女が出て行ってから自堕落な生活をしていたとは
少なくともファンには微塵も見せていなかったとは!
さすがですね、先輩!」
「嫌味か?」
「そう捉えてくれるのなら俺の気持ちもまだ救われるってもんですよ」
薄く笑った事務所の先輩は一口琥珀色のウィスキーをのどに流し込み、
翔はそれを睨みつけるように見た後深いため息を吐いた。

「どうした?」
「いや・・・全然、歯が立たないっていうか・・・
敵わないっていうか・・・・あぁ~~もう!マジでむかつく!」
「おい!先輩に言う言葉か?」
「コレに関しては先輩も後輩もないですよ」
「まぁ、そうだな・・・むしろお前の方が色々知っているんだもんな
俺の方が敵わないさ」
「あぁ~~そういうことをさらっと言う、マオさん、
悔しいけれどかっこいいですよ!」

茶目っ気たっぷりに・・・しかしどこか寂しそうに笑いながら
親指を立てたよき後輩を改めてグラス片手に見た。
愛する女性の一番辛いときに傍にいてくれたのが
彼でよかったのかもしれない。
本来なら自分が傍にいて息も止まるほどの幸せで包み込んでいたはずなのに
しかし、そのことを今悔やんでいては前には進めない。
辛い時期があってやっと本当の意味での幸せを
掴むことができたのできたのだから。
この後輩は自分たちにとってかけがえのない存在になった。

「マジで、和華子と映を今まで以上に幸せにしてやってください。
もし、できなかったらその時は・・・俺が彼女たちを幸せにします!」

ウィスキーのグラスを一気に空にして翔がやや据わった目で呟いた。
迫真の演技でもきっとこんな目はできないはず。
今にも泣き出しそうな表情の彼はそれからしばらくグラスを前に
拳を握り締め、その手は小刻みに震えていた。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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