2017 / 09
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書類を持っていくようにと上司から仰せつかって
今、滅多に上がって来ない重役フロアにいる。
エレベーター降りたときには「なぜ?」という思いよりも
興味のほうが先立ってしまい秘書室をもう少しで通り過ぎるところだった。

「総務部の・・・堂前ですが・・・」
「連絡をいただいております。こちらへ・・・」
「はい・・・」

通されたのは秘書室の隣にある小会議室だった。
同期の中でもなかなかの評判の男性秘書の人に案内された。
持参した書類を渡してそのまま自分の部署へ戻れると思っていたが、
その人に「ここでお待ちください」と言われて・・・。
座り心地の好い背もたれの高い椅子に座った。
室内の壁にかかっている時計をただぼんやりと眺めながら・・・。

それから少し経って扉が静かに開いた。
先ほどの秘書の人と穏やかな顔立ちの男性が入ってきた。
どこかでお目にかかったことのあるような・・・。
そんな思いが頭の中を過ぎって、ハッと椅子から立ち上がった。
それと同時に秘書の人は静かに部屋の扉を閉めながら出て行った。

「君が・・・そうか・・・君なんだね?」
「あの・・・」
「いやいや、そう硬くならずに」

そう言いながらその男性は手を差し伸べながら
もう一度椅子に座るように促した。
そして私のすぐ隣に自分もゆったりと腰掛けられた。

「私のことは知っているかね?」
「あの・・・先日の訓示でお顔を拝見しました」
「ははは・・・そうか・・・
じゃぁ、君は私を知っているということだね?」
「はい、社長でしらっしゃいますね?」
「まぁ、そういうことだね」
「そんな社長が、なぜ、一社員の私に?」
「社長たるもの社員全員と話がしたくなってね。
まずは君がトップバッターなんだよ」
「はぁ・・・」
「ははは・・・というのは、まぁ、冗談で、
いやいや、社員全員と話がしたいというのはいつもそう思っているよ。
敢えてここに君を呼んだのは・・・大切な用があったからだよ」

そう言う社長のお顔はとても大手企業のトップとは思えないくらい
茶目っ気たっぷりの満面の笑みだった。
そう、その穏やかな雰囲気も含めて想い人を連想させるようだった。
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紫苑あかね

Author:紫苑あかね
恋する人たちの切ない想いを描いています。

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